研究実績の概要 |
蚊はマラリアやデング熱といったヒトの重要な疾病を媒介する重要な分類群である。特に蚊類においては雌のみが卵を作るために吸血行動を行いその際に様々な病原体を媒介することを鑑みても、この生物群の性決定機構を理解することは非常に重要である。イエカ属(Culex)は日本脳炎、ウェストナイルウイルス熱、フィラリア症といった人の病気を媒介する種を含む重要な分類群である。イエカ属の性決定機構にもM因子が第一染色体に存在することは古くから知られていたが、これまでに見つかっているM因子(Yob, Guy1、Nix)に相同性のある遺伝子はゲノム中からは発見されておらず、この属の蚊もまた独自の性決定因子を持っていると考えられる。本研究ではフィラリア症やウエストナイル熱の媒介者であるイエカ(Culex)属の蚊における性を決定する遺伝子(M因子)を特定すること、および性決定機構の分子メカに図の詳細を明らかにすることを目的とする。これまでに見つけている雄特異的ゲノム領域から転写物を産ずる配列を見つけるため、前年度までにネッタイイエカ雄及び雌成虫の全mRNA 配列のmRNA-seq解析を行ったが、myo-sex以外で発現している遺伝子を見出すには至らなかった。イエカ属の未知のM因子は胚期の間にのみ特異的に発現していると考え、産下24時間後の胚から抽出したRNAを元にmRNA-seq解析を行った。しかしながら、この解析においてもやはり雄特異的ゲノム領域から雄特異的なミオシン重鎖遺伝子myo-sex以外で発現している遺伝子を見出すには至らなかった。同じイエカ属であるコガタアカイエカについて、ロングリードシーケンサーによる解読を行った。この種の雄決定領域について、これまでに得られていたものよりも詳細な情報が得られたが、myo-sex以外に遺伝子と思われる配列を発見するには至っていない。
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