研究実績の概要 |
白神山地のブナ樹皮から分離したArmatimonadetes門Capsulimonas corticalis AX-7株の機能・生態の解明を試みる。2021年度に明らかにしたのは以下の通りである。前年度からの課題であったゲノム解析やRNAseq解析の阻害要因となる多糖生産は、培地の炭素源として多糖を構成するグルコース・ガラクトース・マンノース・キシロース以外の糖を用い、振盪培養を行うことで減少することが示された。多糖生産を減少させた条件でゲノムDNAを抽出することで純度の高いゲノム解析に成功した。AX-7株ゲノムは7,645,051 bpの環状ゲノムでGC含量は60.3%と多核、CDSは6,631個の存在が予想された。 ゲノム配列に基づいて予想されたタンパク質配列よりKEGGデータベースで代謝予測を行ったところ、多糖生産に関連する代謝は見出されなかった。このことから多糖生産に関与する未知の経路の存在が考えられた。 樹皮に生息するAX-7株をブナ・スギ・ヤマナラシを対象にしてメタゲノム的手法で解析したところ、AX-7株はスギと関連性が高く、ついでブナから多く検出され、ヤマナラシからは検出されないという前年度の解析が再現性が確認された。また、ブナ・スギでのAX-7株や類縁種の存在量に時期的変動はみられず、ブナ・スギの樹皮表面に安定して生息していることが示唆された。なお、ヤマナラシ樹皮抽出物がAX-7株の生育を阻害するという予備的な実験結果を得ている。
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