2022年度は1)2019年より継続してきた山梨県内における在来種のカワヂシャと,外来種のオランダガラシおよびオオカワヂシャ(特定外来生物)の目視確認調査とそのデータの取りまとめを行うとともに,2)水草・大型藻類の生理実験および,3)県内河川・水路の環境測定と水草・大型藻類のフローラ調査とそのデータの取りまとめを行った。1)の目視確認調査は山梨県内の水路を含む605河川874地点で3種の花期である4月下旬~5月上旬を中心に補足的に10月まで行った。2022年までにカワヂシャの生育を114地点で確認することができた。しかし,カワヂシャは51地点(45%)ではオランダガラシと,13地点(11%)ではオオカワヂシャと,33 地点(29%)では両種と混生しており,カワヂシャのみが生育していた地点は僅か17地点(15%)に留まった。オランダガラシは266地点,オオカワヂシャは112地点で確認され,オランダガラシのみが確認されたのは152地点,オカワヂシャのみのみが確認されたのは33地点であった。2)生理測定実験は,2022年に水草・大型藻類数種でプロダクトメーターとパルス変調クロロフィル蛍光測定による光合成測定実験と,栽培実験を行ったが,種毎の明確な生理的な差異を導き出すまでには至らなかった。3)フローラ調査と環境測定は2022年までに山梨県内の河川・水路の計230地点で行い,絶滅危惧II類2種(オオイシソウとシャジクモ)と準絶滅危惧3種(カワヂシャ,ミズアオイ,タンスイベニマダラ)を含む計72(水草45,大型藻27)種(分類群)を確認し,標本を作成するとともに,それらの生育環境について明らかにした。今後も生理実験を継続して行い,温度上昇や水質汚濁に対する種毎の適応特性を把握することで,その様な環境変化に応答した水草・大型藻類の多様性の変化を予測していきたい。
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