研究課題/領域番号 |
20K06093
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
唐澤 重考 鳥取大学, 農学部, 教授 (30448592)
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研究分担者 |
岸本 年郎 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 教授 (70728229)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土壌動物 / 系統地理 / 種分類 |
研究実績の概要 |
1)コロナの影響によって琉球列島、伊豆諸島での現地調査はできなかったため、すでに採集してあった約8000個体の標本整理、および、約500個体のDNA解析を行った。この結果、アジアモリワラジムシ種複合体、タテジマコシビロダンゴムシ種複合体は広域に分布するにも関わらず、ほとんど遺伝的変異が見られないことから、近年、急速に分布を広げたことが分かった。また、アジアモリワラジムシを対象に、現在と2万年前の気候データを用いた生息適地モデルを作成した。 2)屋久島で採集された国内外来種オキナワキノボリトカゲ44個体を対象として、解剖を行い胃内容物を調べた。合計496の動物片が確認され、そのうち、筋肉が残っていた135サンプルを対象にmtDNA COI遺伝子領域の塩基配列の決定を試みた。塩基配列が決定できたのは60サンプルで、そのうち19サンプルがBLASTによって98%の類似度で同定された(15種)。これ以外のサンプルについては近縁種のDNAを用いて系統樹を作成し、属、科、目レベルでの特定を行った。形態にて同定したサンプルも含め、オキナワキノボリの胃内容物には87種が含まれていることが分かった。 3)近年、日本各地で発見が相次いでいるアマミサソリモドキの採集報告を整理するとともに、新しく発見された、高知県、大阪府、鳥取県、壱岐島、岡山県のDNA解析を行った。この結果、本州で新しく見つかったサンプルの多くは、八丈島経由で持ち込まれた可能性が高いことが分かった。一方、高知県や壱岐島のサンプルは海流分散によって侵入した可能性も示唆された。 4)これまで3亜種として扱われていた日本産フサヤスデ属を対象に、分布情報の整理、および、遺伝子解析を行い、これらは3種として扱うことが妥当であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
離島での現地調査ができていないため、当初の計画通りには進んでいないが、過去に採集してあったサンプルの整理、現地協力者に標本提供を受けることで、研究目的の達成に向けて大きな遅れはなく進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)形態やDNAデータに基づき独立した種と判断された標本においても、種名が確定できないものが多数あったため、今後、タイプ標本の観察を行い、それらの種名の確定を行う。 2)未整理のワラジムシ類標本が多数残っているため、それらの整理を進め分布情報のデータベース化を行う。また、そのデータに基づき、種レベルの生息適地モデルを構築し種多様性の地図化を行う。 3)DNA解析を進め遺伝子レベルの分布情報のデータベース化を行う。これらデータを用いて、遺伝子レベルの分布推定を行い、遺伝的多様性の地図化を行う。 4)屋久島で採集されたオキナワキノボリトカゲの胃内容物のうち、サンガー法で塩基配列が決定できなかったサンプルを対象に、アンプリコン解析を用いて種同定を行う。
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