研究課題/領域番号 |
20K06094
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
中 秀司 鳥取大学, 農学部, 准教授 (00443846)
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研究分担者 |
山崎 和久 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 協力研究員 (10617145)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハラビロカマキリ / ムネアカハラビロカマキリ / 繁殖干渉 / 性フェロモン / 気体捕集 |
研究実績の概要 |
本研究課題のうち、2020年度は気体捕集によるハラビロカマキリ(以下ハラビロ)とムネアカハラビロカマキリ(以下ムネアカ)の雌に対する両種雄の行動を観察すると共に、気体捕集による両種雌性フェロモンの捕集及び成分同定を試みた。 1) 雌に対する雄の行動 暗条件下でハラビロあるいはムネアカの雌にコーリング行動(性フェロモンを放出する行動)を起こさせ、その雌に対するハラビロ及びムネアカ雄の行動を観察した。ハラビロ、ムネアカ共に、雄は同種の雌がコーリング行動を示したときのみ雌に接近し、別種雌がコーリング行動を起こしてもその雌には接近しなかった。一方、コーリング中の雌に両種の雄をあてがったところ、ムネアカ雄は低率でハラビロ雌を交尾相手と認識し、接近して腹端の結合を試みた。また、ムネアカ雄が一連の行動を示している間、ハラビロ雌はムネアカ雄を攻撃/捕食しなかった。これらの結果は、両種間に雌性フェロモンを介した繁殖干渉が存在する可能性を明確に否定する結果であるが、近距離でムネアカ雄→ハラビロ雌への繁殖干渉が起こる可能性も示唆する。 2) 雌性フェロモンの捕集及び成分同定 気体捕集によって得た両種の雌性フェロモンをヘキサンに溶解して同種の雄に与えたところ、雄は雌性フェロモン抽出物に誘引された。しかし、続けて行ったGC-EAD分析では、雄触角は抽出物のいかなる成分にも応答を示さなかった。加えて、GC/MS分析においても体表炭化水素以外に特徴的な化合物は見いだされなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハラビロ、ムネアカ共に、雌性フェロモンの存在は示唆されていたものの、配偶行動に際して雌が雄を誘引する証拠は提示されていなかった。本研究によって、両種共に雌性フェロモンを用いて雌が雄を誘引すること、性フェロモンを介した繁殖干渉の可能性が否定されたことの意義は大きい。一方で、雌性フェロモンの活性成分を化学的に同定するためには、まだいくつかの障壁があることも見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度からは、以下の項目に注力して研究を進める。 1) 近距離で起こる、雌性フェロモンによらない繁殖干渉の可能性: 低率ではあるがムネアカ雄はハラビロ雌を交尾相手と認識し結合を試行した。この誤認識がハラビロに不利(ムネアカ雄→ハラビロ雌への繁殖干渉)となるのか、それとも有利(ハラビロ雌によるムネアカ雄の捕食)となるのかは未知数なため、観察数を増やしてさらなる検証を行う。 2) 雌性フェロモン成分の同定 コーリング中の雌からの気体捕集で、両種共に雌性フェロモンが抽出できることが明らかとなった。2021年度以降は、2020年度に捕集された炭化水素そのものが性フェロモンの活性成分である可能性を含めて、抽出物中の活性成分同定を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
鳥取大学において旅費が生じなかったため残額が生じた。これは2021年度に主に旅費として使用する予定である。
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