研究課題/領域番号 |
20K06104
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
米澤 千夏 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60404844)
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研究分担者 |
園田 潤 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (30290696)
大風 翼 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40709739)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ランダムフォレスト / 画像解析 / 人工衛星 / Sentinel-2 / 植生指標 |
研究実績の概要 |
人工衛星の観測画像に機械学習を適用することによる大崎耕土における屋敷林抽出手法を開発している。画像解析においては、西古川地区を対象としてESA(欧州宇宙機関)によって無償提供されているSeneinel-2に搭載された光学センサであるMulti Spectral Instrument (MSI)で観測された画像にランダムフォレストを適用して屋敷林の分類を試みた。その結果、冬季の画像を含む多時期の画像から植生指標を計算し、重ねあわせをおこなったデータセットが抽出に有用であることが明らかになった。植生指標としてはNormalized Difference Vegetation Index(NDVI)、Green NDVI、Blue NDVIの3つを検討した。分類結果の精度評価をおこない、誤差行列を計算した。屋敷林クラスと森林クラスの間での誤分類は10%以下であった。ただし屋敷林クラスと水田を除いた耕地クラスとの間での誤分類は最大28%であった。大崎耕土の屋敷林は、常緑樹や落葉広葉樹を含む多様な樹種によって構成されており、季節変化が大きい。このため、主に常緑樹で構成される森林とは比較的精度よく分類されたが、季節変化がある耕地との分類誤差が大きくなったことが考えられる。屋敷林の分類精度(生産者精度)はBNDVIを用いた場合73%となった。このことから屋敷林のおよその分布を把握するうえでSentinel-2画像は有用であり、ここで提案する手法は適用可能であるといえる。分類結果に建物データを重ね合わせ、建物から一定距離内の屋敷林に分類したクラスを抽出することにより、より精度よく屋敷林を抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リモートセンシング画像の解析による地理的分布の明示においては、人工衛星によって観測された画像の解析手法を開発するとともに、航空写真に機械学習を適用した抽出手法の開発を試みており、おおむね順調に進展している。航空写真のデータは国土地理院より入手済みである。成果の一部は2021年3月19日にオンライン開催された大崎市が参加する東北大学PICS・宮城県農政部連携研究事業研究成果報告会で報告した。 現地調査においては、大崎市世界農業遺産推進課へのヒアリングをおこない、調査に協力できる家屋の紹介をうけた。また地元自治体としての屋敷林保全への取り組みについての情報を得た。また屋敷林保全活動への学生ボランティア参加.として活動への協力をおこなった。対象家屋についてドローンによる計測を年度内に複数回実施し、観測画像をStructure From Motion(SfM)によって解析することにより、屋敷林と家屋の高さを含む数値表層モデル(Digital Surface Model: DSM)を得た。ただし広葉樹が落葉していた時期に観測をおこなったため、イグネの高さは正確に再現できていない。 防風機能の定量的評価のために風環境の実測調査をおこなう予定であったが、新型コロナ感染症対策で人の移動が制限されていたため、測定技術をもつ研究分担者による調査がかなわなかった。ただし風速計設置について大崎市に説明し、対象家屋所有者の了解は得られており、移動が可能になれば調査が可能な状況となっている。また、屋敷林の所有者へのヒアリングを担当予定である研究協力者も在京のため現地調査ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
画像解析においては、成果を学術誌への投稿論文にまとめるべく準備をすすめている。大崎市へのヒアリングおよび解析をすすめていくなかで、伝統的な屋敷林と生垣の判別が課題であることが明らかになった。今後、高さデータの活用による判別方法の確立を目指していく。また大崎耕土全域を対象とした解析をおこなうことも次年度以降の課題である。 夏季に再度ドローンによる観測をおこない、取得した画像をSfMによって解析することにより樹高を含めた三次元形状をモデルとして再現する。三次元気流解析において、ドローン観測画像のSfMによる解析によって得た数値表層モデルをもとにシミュレーションをおこない、屋敷林の機能についての定量的評価をおこなう。 県外の研究分担者および研究協力者による現地調査が可能になれば、対象家屋への風速計の設置による屋敷林の防風機能の実態を解明する。数値表層モデルを用いたシミュレーション結果と比較し、シミュレーションの有効性についても実証する。大崎市と協力して調査対象家屋を増やすことも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症対応のため移動が制限され、調査や学会発表がままならず当初の研究計画に変更が生じた。そのため特に旅費に未使用が生じた。 Structure From Motion(SfM)によるデータ処理においては既に保有していたソフトウェアを使用していたが、解析をおこなううえで不都合があり、対応するために次年度においては新たなソフトウェアを購入する。また現地設置用の風速計やハードディスクの購入も見合わせた。そのため、物品費に600千円を予定する。年度後半には感染症対策が進み研究分担者、研究協力者による調査が可能になることを見込み、旅費に230千円を予定する。データ処理のために人件費として450千円を予定する。その他として論文出版、英文校閲のために200千円を予定する。
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