研究課題/領域番号 |
20K06104
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
米澤 千夏 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60404844)
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研究分担者 |
園田 潤 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (30290696)
大風 翼 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40709739)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リモートセンシング / 衛星画像 / ドローン / 分布把握 / k-平均法 / 流体解析 / 風速 |
研究実績の概要 |
屋敷林の分布を把握するためのリモートセンシング画像の利用方法として、SPOT6衛星画像を用いた解析方法を提案した。5月上旬に取得された解像度6 m のマルチスペクトル(MS)バンドとNDVI、MSバンドとテクスチャ特徴量、解像度1.5 m のパンシャープンMSバンドとテクスチャ特徴量の3つのデータセットにk-平均法を適用した屋敷林の抽出結果を比較した。各手法において抽出された屋敷林の面積別の抽出精度に着目すると、屋敷林の面積が500 m2未満の場合、パンシャープン画像の解析結果はMS画像の解析結果よりも屋敷林の抽出率が0.2以上高い結果となった。以上の結果により、大崎耕土において500 m2以上の規模の大きい屋敷林分布把握は解像度6 m程度の衛星画像に、小規模な屋敷林を対象としたより詳細な屋敷林分布は解像度 1.5 m のパンシャープン画像にk-平均法を適用した手法が有効であることが示唆された。 三次元気流解析においては、CFD (Computational Fluid Dynamics) に基づく流体解析により検討を行った。本検討では、建物及び居久根の形状は、ドローンを用いた空撮画像を基に作成した数値表層モデルを参考に再現した。居久根は高さ10 m程度で卓越風向側に位置しており、居久根の流体力学的影響は、植生キャノピーモデルを用いて再現した。風速場はLarge-eddy simulationにより風速変動も考慮した。歩行者高さの風速に着目すると、居久根による弱風域は樹木高さの10倍程度風下まで広がっており、敷地内の平均風速が1/4程度に減少した。また、中庭で極稀に発生する強風も1/4程度に低減し、風速の変動が抑えられた風環境が形成される事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リモートセンシング画像の解析による地理的分布の明示においては、SPOT6衛星画像を用いた抽出手法の開発について学術雑誌で発表した。 三次元気流解析では、ドローンによる空撮画像をもとに作成したモデルをもとにしたシミュレーションを実施し、屋敷林の風速低減効果を定量的に示すことができた。結果は学会で発表し、発表者は優秀発表賞に選出された。さらに学術雑誌で論文として公表すべく結果をとりまとめている。 COVID-19の影響が比較的少ない時期に、三次元気流解析のための風環境の実測を含めた現地調査を複数回実施した。屋敷林および民家のドローンによる観測をおこない、観測データから数値表層モデル(Digital Surface Model: DSM)を作成した。夏季に観測したデータから屋敷林の高さを抽出することを試みた。 画像解析における機械学習の適用についても検討を進めている。U-Netによる解析について、成果がまとまってきている。結果の一部については学会発表をおこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
航空写真の機械学習による屋敷林の抽出手法について検討している。今後、パラメータの設定等を調整することによって抽出精度の向上を目指す予定である。また、高さデータや建物データを解析に取り入れることによって、屋敷林分布の明示を目指す。Sentinel-2などの衛星画像の利用方法の開発についても引き続き検討を進めている。 年度内に風環境解析のための現地調査をおこなうべく大崎市と調整していたが、3月16日に発生した地震のため延期となった。来年度以降に実施すべく準備をすすめている。風向は季節ごとに異なることから、新型コロナ感染症の影響を避けながらできるだけ現地観測の機会を設けることができるように調整している。 大崎市世界農業遺産推進課とは引き続き連携をとりながら研究活動をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症対応のため移動が制限され、学会の殆どがオンライン開催であった。現地調査においては状況をみながらの実施となり、予定していた調査が実施できないことがあった。また、3月に発生した地震の影響による延期があった。そのため特に旅費に未使用が発生した。 2022年度においては、延期していた現地調査を実施する。また国際学会での成果の報告を予定している。
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