研究課題/領域番号 |
20K06107
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
加藤 麻理子 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員准教授 (60826957)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 持続可能な観光 / 利用者負担 / 協働型管理運営 |
研究実績の概要 |
生態系保全や自然資源の管理においては、多様な主体の関わりや連携、役割分担の構築が求められ、近年では利用面で持続可能な観光を意識した取組も重要性を増している。持続的な活動実施のための資金確保や人材育成につなげていくことも中・長期的な重要課題である。 本研究では、生態系保全や自然資源の管理における様々な参加主体の関わり方について、「人材」と「資金」という2つの観点に着目し、持続的な取組推進に向けた実効的な連携を進めるために必要な要素を明らかにすることを目的とする。2021年度も新型コロナウイルス感染症対策を受けた移動制限及び自粛の影響が大きく、県境を越えた移動を伴う現地調査等の実施が限定的となったが、前年度に実施した長野県内の登山利用に関する継続調査、世界自然遺産登録が決定した沖縄やんばる地域における現地調査を中心に実施した。また地域主体の持続可能な観光に沿った取組を行なっている地域について、京都丹波高原国定公園の美山町や伊根町等の現地調査を実施した。 具体的には、前年度に重点的な調査対象事例とした上高地周辺を含む北アルプス南部地域について、2021年9月に実施された協力寄附金の実証試験事業について調査を実施した。新型コロナウイルス感染症の大きな影響も受けて顕在化した山小屋施設の役割の重要性と現状の課題を受けて、登山利用者の参画・理解の重要性について新たな仕組みが求められており、北アルプス南部地域においても登山道管理と関連する利用者参画制度が検討されている実態を把握した。 また、2021年7月に世界自然遺産登録が決定した沖縄やんばる地域について、これまでの自然資源の保全、利用に関する活動展開の分析を踏まえ地域住民の参画の重要性を検討し、さらに今後の持続可能な観光利用の取り組みに関する地域団体の関係者を対象としたヒアリング調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度も新型コロナウイルス感染症対策を受けた移動制限及び自粛のため現地調査の実施は限定的となったが、上高地周辺を含む北アルプス南部地域の登山利用を対象とした協力寄附金の実証試験の情報収集と関係者ヒアリングを実施し、日本でもっとも注目される山岳利用地域の一つである北アルプス南部地域についての利用者負担の導入に向けた議論に関する状況を把握することができた。 また、やんばる地域について世界遺産登録が実現した後の観光利用の展開を念頭においた、新たな活動主体の連携や体制づくりを含めた現地関係者との意見交換、ヒアリングを実施し、今後の持続可能な観光の観点を踏まえた課題を把握できた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、沖縄やんばる地域の世界遺産登録後の観光利用の展開を主な調査対象とし、特に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて来訪者側のニーズも変化していることに留意し、持続可能な観光の観点で来訪者と地域側の接点・交流により地域の持続性に寄与する仕組みや、地域住民や民間企業の新たな参画のあり方について検討を行う。 北アルプス地域を中心とする登山利用の実態についても、登山道の適切な維持管理、山岳環境利用の持続性を担保する方策や利用者負担の導入に向けた動きを継続的に情報収集する。 あわせて、今後のコロナウイルス対策の推移と国内外の観光利用の再開状況を注視し、来訪者の意識や観光に求められるニーズに生じた変化、課題、地域にとっての取組重要性を十分に踏まえながら、地域住民や民間企業等の新たな主体同士の連携や活動に関する他の地域事例の検討も含め、調査を実施することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
自然資源の管理運営体制について、特に利用面で重要な観光利用のあり方を持続可能な観光の推進の観点を踏まえて検討することが必要となり、研究目的をより精緻に達成するため、近年のコロナ禍を踏まえて旅行者側のニーズに生じた変化や、地域の自然や文化を生かした持続的な観光推進のための取組方針における新たな主体の参画方法について情報収集を行うこととなった。自然資源の保全と利用の両面を理解して活動する担い手の地域事例や、さらに民間企業の新たな連携や支援の事例等に関する追加調査を実施するものとする。
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