研究課題/領域番号 |
20K06111
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
美濃 伸之 兵庫県立大学, 緑環境景観マネジメント研究科, 教授 (00336835)
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研究分担者 |
嶽山 洋志 兵庫県立大学, 緑環境景観マネジメント研究科, 准教授 (40344387)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 公園緑地 / 防災 / 障がい者 / バリアフリー / ユニバーサルデザイン |
研究実績の概要 |
本年度は、「公園緑地に携わる実務者向けオンライン教育プログラムの試行」を中心に検討を進め、おおむね90分を想定した公園緑地に携わる実務者向け教育プログラムを作成、試行した。ここでは、まずUDの全体像や多様性、国内の到達点や現状の課題を概説した後、ハード(移動空間・行為空間)およびソフト(情報・人的支援)による手法について説明、最後に最近の話題を紹介する構成とした。教育プログラムの実施は国営海の中道海浜公園内6機関45名の職員等にはオンデマンド方式で、国交省国土交通大学校の公園・緑化研修参加者40名(国または自治体公園行政担当者)にはライブ配信方式で実施した。有効性の検証のために、講義内容について、①理解度(5段階)、②難易度(5段階)、③印象に残った内容(選択複数回答2つまで)、良かった点または改善すべき点(自由記述)、実務での活用について、①活用の程度(5段階)、②活用の場面(自由記述)に関するアンケート調査を実施した。作成したUD教育プログラムの受講生からの評価は良好であり、おおむねプログラムが適切であったと考えられた。講義で提供した7つの項目のうち、受講生がどれに関心が高いかを示した結果についてであるが、まず、行政向けでは、UD導入、UD7原則、情報、人的支援などが20%程度とやや高い傾向が見られ、国内UD状況、公園計画が10%程度と続き、最近の話題は3%程度と非常に少ない割合となった。一方の管理運営向けでは、情報や人的支援が両者ともに25%以上となり、次いで国内UD状況が15%程度、UD導入、公園計画、UD7原則が10%程度、最近の話題は2%程度と非常に少ない割合となった。これらのことから、UD教育プログラムの運用においては、総じてソフト対応への関心が高いこと、行政と管理運営では関心に違いがあること、オンライン方式の評価が概ね良好であることなどが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、上述の通り、公園緑地で実施できる要支援者に関する情報共有を目的とした減災プログラムを考案することを目指していた。しかしながら、新型コロナウィルス感染症の拡大が収まらず、公園でのプログラム実施および要支援者等への対面調査の目処が立たないことから、今年度からは、研究目的およびそれへのアプローチを大きく変更することとした。しかしながら、新たな課題設定のための準備に時間を要しているため、取り組みは総じて遅れている。今後は、対象地域を地元の兵庫県内に設定することやオンラインまたはウエブサイトを通しての取り組みに限定することで、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けないように工夫をし、研究に取り組む予定である。ここでは、公園緑地とその障害者利用について検討するところは維持しながら、コロナ渦で実施可能なアプローチを採用することし、今後は、1)公園緑地に携わる実務者向けオンライン教育プログラム、2)公園緑地ウエブサイトにおけるユニバーサル化情報提供のあり方、3)地域レベルでのリスク分布と公園緑地立地特性との関係性の把握、について検討を続けていくこととする。それぞれは、実務者教育、情報提供、公園緑地の立地配置に関するもので、いずれも要支援者の減災と公園緑地を結び付けるには欠かすことができないものである。次年度は、公園緑地ウエブサイトにおけるユニバーサル化情報提供の実践的試行について、中心的に取り組みを進める。当該課題は研究代表者が以前から取り組みを進めてきたもので、要支援者の減災にも関連させながら、研究の遅れを取り戻すべく、工夫をしながら進めていく。ここでは、いわゆるユニバーサル化情報が現在の公園緑地における公式サイト情報等と融合したモデルの試作とその評価を最終ゴールとして設定する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き、1)公園緑地に携わる実務者向けオンライン教育プログラム、2)公園緑地ウエブサイトにおけるユニバーサル化情報提供のあり方、3)地域レベルでのリスク分布と公園緑地立地特性との関係性の把握、について検討を続けていくこととする。まず、1)については、基本的な試行はすでに終了し、その評価も得ていることから、次年度以降は属性の異なる受講生への適用、ならびにコロナ渦の状況によっては、対面による教育プログラムの適用やフィールド実習についての検討を進める。また、実務者からは学生との協働的プログラムへの要望も少なくないことから、これについても実現を模索していく。続いて、2)については、次年度の中心的取り組みとして、公園緑地の公式ウエブサイトにおける理想的なユニバーサル化情報のあり方を具体的に示すことを目標におき、取り組みを進める。公園緑地におけるユニバーサル化情報については、ガイドライン等で努力義務化がなされ、その公開が推進されているところであるが、必要とする利用者が限定されてしまうことが避けられず、その定期的な更新や質の確保が困難である。そのため、ここでは、まず、障害当事者による事前情報収集の実態調査と都市公園公式ウエブサイトの記載内容や車椅子・ベビーカーに関連したウエブ上での口コミ情報などとの関連性を調べ、現在のユニバーサル化情報の現状を理解するとともに、両者の共存のあり方について検討する。また、融合の具体的なあり方を実現したサイトの試作とその評価を通じて、その実現可能性についても考察する。最後に、3)については、兵庫県内に対象地を設定し、浸水リスクの分布、公園緑地を含めたオープンスペースと多目的トイレ等のユニバーサル化施設の分布、要支援者の具体的行動等との関係性について検討することで、要支援者の減災における緑地やオープンスペースの役割について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大により、予定していた対象地域への訪問や障害当事者を対象としたヒアリング等の実施が困難であったため。
研究費は、現地調査旅費、および対人ヒアリングおよび専門知識を有する専門家招聘の謝金、外部講師旅費、使用する機器購入や事務費等に充当する。次年度は、従来に予定していた福岡県での調査研究は取り止めるものの、先進事例訪問や研究打ち合わせのための旅費が必要である。また、研究を実施するための情報解析機器やソフト、メディア、記録機器を購入する費用が必要である。また、ヒアリングした結果や空間情報データベースのデータ収集および整理にかかる研究補助経費も必要である。
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