研究課題/領域番号 |
20K06118
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
大久保 悟 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, ユニット長 (30334329)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セイヨウミツバチ / 尻振りダンス / 花資源 / 採餌範囲 |
研究実績の概要 |
当初、周辺土地利用が異なる養蜂場を対象に採餌範囲の把握を予定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から移動を制限し、所属する研究機構内の実験養蜂場を対象に、巣箱ごとの採餌範囲の違い、およびその季節と時間変化を明らかにすることとした。上記実験蜂場において近接する3群を選定し、巣内を観察可能な巣箱を用意した。8月から巣の重量と温湿度の自動計測を始めるとともに、巣内の8の字ダンスを約2週間間隔で朝から夕方までの6時間録画した。ダンス録画は10月末まで、巣重量等の計測は3月末まで行った。8月は一般的に花資源が少ないと言われているように、ダンスから判読できる採餌範囲はばらつきが大きく、特定の大きな餌源がないことが再確認できた。9、10月になると同じ採餌場所を示すと考えられるダンスが多くみられるようになり、かたまった餌資源があること、その場合、午前中のダンス数が非常に多いのに対し、午後はダンス数も少なく、採餌距離も短い傾向が確認された。これは、大きな餌資源があると採餌効率が高いため、必要な資源が入手できた後は採餌活動が低下するためと示唆された。また、これまで開発したダンス自動解析プログラムを改良し、解析時間をより短縮する手法開発も試みた。1秒あたり120フレームの比較的高フレームの動画を撮影し、フレーム間演算をピクセル単位で行うことで、大幅に解析時間を短縮できる可能性が確認できた。この他、昨年度まで実施していたミツバチ農薬曝露被害低減に関する研究成果の補足調査も本課題で実施し、論文として公表できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請当初の計画と比較して、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から活動範囲を縮小し、若干の方向修正を行ったため、蜂群の一番の成長時期である春から初夏にかけての採餌範囲等に関するデータ取得ができなかった。そのため、課題の進捗は遅れたと判断したが、夏以降の採餌行動と花資源の関係については既存のデータと合わせて十分な知見を得ることができた。また、既存データの補足を行うことで、研究成果を公表することもできたため、3年間の研究計画は着実に進められたと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から移動を制限した方が良いと考え、今年度実施した研究内容を継続して行うこととする。とくに今年度データが取れなかった春から初夏にかけての採餌範囲と蜂群動態を集中的に把握し、年間を通じた採餌範囲の変化について明らかにする。また、ダンス自動解析手法の改良にも試み、リアルタイムで採餌ダンスの把握が可能になるよう検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は実際に養蜂家が管理する周辺土地利用の異なる養蜂場を複数箇所で調査する予定で調査旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で移動制限を行ったため、旅費の支出がなかったことから次年度への繰り越し分が発生した。引き続き、移動の制限が必要と考え、所属する研究機構内での調査を実施するが、ダンス自動解読システムの改良などに必要な高フレームレートカメラなどを導入して、当初の研究目的を効率よく達成するために経費執行を行う計画である。
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