研究課題/領域番号 |
20K06120
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
逢沢 峰昭 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70436294)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | キリ属 / ニホンギリ / チョウセンギリ / 葉緑体DNA / 核マイクロサテライト / 遺伝的系統 / 花冠 / 遺伝的多様性 |
研究実績の概要 |
2021年度は、福島県林業研究センター、福島県南会津町、栃木県林業センター、宇都宮大学周辺、宇都宮大学船生演習林、および米国ハーバード大学アーノルド樹木園(韓国産および石川県産)に植栽ないし自生していたキリ属種の合計28個体の葉を収集してDNAを抽出した。また、28個体のうち10個体は花冠内面の観察ができ、模様があったものをニホンギリ型(7個体)、無いものをチョウセンギリ型(3個体)と識別した。次に、GenBankに登録されているキリ属種8種の葉緑体DNAの全塩基配列の比較に基づいて、種間の変異がみられると期待されたtrnT-trnLおよびtrnH-psbAの遺伝子間領域の塩基配列を決定した。さらに、タイワンギリで開発された核DNAのマイクロサテライト(SSR)マーカーのうち、共同研究者によって選抜されている11遺伝子座について遺伝子型を決定した。その結果、葉緑体DNAでは6つのハプロタイプが検出された。これらの系統関係を推定した結果、今回収集したキリ属樹種には、大きく系統の異なる2系統が存在することが明らかになった。会津地方ではこのうちの1系統のみがみられた。一方、核SSRマーカーを用いた解析の結果、2つのグループに分けられたが、葉緑体DNAの2つの系統とは一致しなかった。また、葉緑体DNAと核SSRマーカーのいずれにおいても、遺伝的まとまりと花冠内面の模様の有無との対応はみられなかった。しかし、今回は解析に用いた試料数が少なかったため、2022年度は、ニホンギリとともに、チョウセンギリ型の花をもつ個体など、解析個体数を増やしてニホンギリの遺伝的変異を把握するほか、より信頼性の高い遺伝的系統の推定のためにニホンギリ以外の種を含めた解析が必要と考えられた。また、今回は花冠内面の模様の観察ができた個体がごく少なかったことから、2022年度は花冠の調査も必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度と2021年度における新型コロナウィルスの感染拡大に伴う非常事態宣言の発令により県外・県内の出張が禁止になったほか、県の重点化対策によって公立試験場への出張が制限されるなどのため、試料採集の機会が数回に限られた。そのため、研究課題の進捗に遅れがみられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、5月の花期に栃木県、岩手県、山形県、福島県の林業試験場に出張し、植栽されているキリ属樹種の葉と花の試料を採取する。また、栃木県と茨城県の栽培桐畑においても試料を採取する。これらの試料に対して、葉緑体DNAの2領域により塩基配列の決定、核DNAマクロサテライト領域の11遺伝子座の遺伝子型の決定を行い、種識別、遺伝的系統、遺伝的多様性を評価する。さらに、ニホンギリの遺伝的変異を明らかにする上でも、ニホンギリ以外の種も含めた解析が必要と考えられ、ココノエギリ、シナギリ、タイワンギリの試料についても入手先を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度と2021年度における新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、県外・県内の出張の禁止や制限によって試料採集の機会が数回に限られ、予算に残額が生じた。2022年度は、試料収集のため、栃木県、岩手県、山形県、福島県の林業試験場に出張するほか、茨城県、新潟県、秋田県といった桐栽培の産地で試料収集ができるところを検討し、実施する。
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