研究実績の概要 |
これまで、アメリカのコロラド砂漠の土壌とここで生育するキク科植物(Encelia farinosa)を用いて、異なる水分条件(土壌含水率5%と10%)、および土壌微生物を10~100,000,000倍に希釈した条件下で育成し、植物の水分状態、炭素および窒素安定同位体比について調査を行った。また、葉の代謝物、およびイオノーム解析を行った。本年度はこれらの植物の根圏土壌、および根(細根と主根)に生息する微生物のDNA抽出を行うとともに、分離培養した微生物の種推定を進めた。根圏土壌については、細菌と菌類の双方についてイルミナMiSEQによるメタアンプリコン解析を実施した。また、微生物の分離培養では、昨年度各菌株から抽出したDNAのシーケンス解析から、Actinobacteria, Alphaproteobacteria, Bacii, Bacterioidetes, Betaproteobacteria, Gammaproteobacteria, Themoleophliaに属する多様な細菌を得ることができていた。ここには、調査地のコロラド砂漠における微生物ネットワークの中心であったStreptomyces属細菌も数種類含まれていた。 研究期間全体を通して、新型コロナの影響で室内実験を中心とした研究内容への変更を余儀なくされたものの、根圏および根内の微生物群集と砂漠植物の生理生態的特性に関するデータを回収するとともに、乾燥および湿潤条件下での微生物群集形成には微生物の機能特性が重要であることを見出すことができた。また、実験の遅れから、室内実験結果の詳細なデータ解析、および分離培養した微生物菌株を用いた接種実験を実施することはできなかった。これらのデータ解析や微生物を用いた接種試験による植物―微生物間相互作用の理解は今後、さらに進めていく。
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