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2020 年度 実施状況報告書

日本におけるタケ類の開花現象の実態とその生態系影響

研究課題

研究課題/領域番号 20K06127
研究機関香川大学

研究代表者

小林 剛  香川大学, 農学部, 准教授 (70346633)

研究分担者 鈴木 重雄  駒澤大学, 文学部, 准教授 (40581476)
福島 慶太郎  京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (60549426)
久本 洋子  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60586014)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード竹林 / ハチク / 大規模開花 / 一斉開花 / 更新 / データベース / 画像解析
研究実績の概要

1)地理スケールでの開花地の出現パターン:Google Map上に開花地の位置,推定開花時期などを記録した。2010年代の西日本におけるタケ類の開花は,数百カ所以上におよび,10年近くに渡って新たな開花地の出現が続いている。このほとんどがハチクおよび近縁種のクロチクによるものであり,両種にとっておよそ120年ぶりの大規模一斉開花と見なせる。今回のハチク開花地の地理的な拡がりと開花期間の長さは,タケ亜科植物の開花現象として世界最大規模のものである。
2)開花前後の10~15年にわたる林相の変化:近畿~中四国のハチク開花地を含む中山間地域を主たる対象として,Google Earth上の空中写真から竹林を抽出し,さらに開花竹林を識別するため画像解析の手法を整備した。ハチク開花地は開花初年に褐色化,その後数年にわたって黄化・白化し,広葉樹などの樹冠の拡大によって分断化・縮小する傾向が見られた。香川県内のハチク開花地における植生調査・毎ラメット調査では,開花ラメットはしばしば2~3年程度にわたって生残・連続開花していたが,林冠葉は開花初年にほぼ全て脱落し,林内の光環境を劇的に改善した。開花後に地下茎から形成されるササ状の矮小再生ラメットが一時的に林床に増加し,これらも数年にわたって開花していたが,実生の出現は見られなかった。開花開始から3~6年ほどが経過すると,開花ラメットは枯死・倒伏,残存再生ラメットは密度を低下させ,ハチク林としては衰退し広葉樹林に遷移しつつある傾向が見出された。
3)開花竹林の栄養動態と遺伝構造:ある地域内におけるハチク林分の開花は,相対的にi)短期・同調的,ii)長期・非同調的,iii)iとiiの混合の3つのパターンが見られた。その原因としてジェネット間の遺伝的な変異と資源状態の相違が係わっていると考えられた。今後の解析へ向けて,各地の開花林で生葉を採取した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

画像解析による開花地の抽出は,開花パッチの様相を現地観察し画像との対応関係を整理することによって,95%程度の精度が得られるようになった。これによって,開花地の出現頻度・面積が算出可能となり,地域スケールでの開花パターンを考察することができるようになった。また,画像解析と現場観察における林相の変化から,開花開始の時期や開花後の経年数も推定可能となった。これらの推定に基づいて,開花林の長期間の追跡を必ずしも実施しなくても,開花後の経過を把握できるようになった。
一方,林分~ラメットレベルでの開花の事前予測は困難であり,開花後には生葉のほとんどが脱落・稈の枯死が進行することから,開花林・非開花林および開花前・開花中・開花後にわたる体系的な植物体の採取と,その分析は十分に進めることができていない。

今後の研究の推進方策

解析対象地・対象期間を増やし,開花によるハチク林の衰退とその生態系影響の実態を明らかにする。とくに,開花記録地・画像解析の対象地と植物体の採取地をできる限り対応させ,多様な開花パターンのメカニズムとして遺伝構造と資源状態のどちらの影響が大きいかを検証する。

次年度使用額が生じた理由

現地における林相の観察は肉眼による巡視の作業効率が高かったことから,当初予定していたドローンの購入を見送り,実施期間の後半に予定している遺伝構造と化学分析のための各種費用として備えた。また,新型肺炎の感染拡大防止のために遠方への旅行をともなうような野外調査・学会発表を控えた。当初計画よりも多数の標本の分析を行う必要性が生じつつあるため,今年度はその実施のための物品費・人件費・その他へ主に使用する。

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公開日: 2021-12-27  

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