研究課題/領域番号 |
20K06129
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
徳田 佐和子 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林業試験場, 研究主幹 (40414263)
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研究分担者 |
小野寺 賢介 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林業試験場, 主査 (40414247)
和田 尚之 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林業試験場, 研究職員 (60827062)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カラマツ / 衰弱 / 枯死 / カラマツヤツバキクイムシ / ホテイナラタケ / クロゲナラタケ |
研究実績の概要 |
1)全道的な被害の把握: 1カ所数本程度のカラマツの小規模な枯死は多地点で発生していたが、20~30本以上の枯死が複数林分に発生した大規模な集団枯死は道東地方の一部に限られていた。2016年度から問題となった十勝地方の枯死被害のピークは2019年までで、一部の地域を除くとほぼ終息した。 2)被害多発地における詳細調査: R2-4年度にかけて、被害多発地である道東地方の7林分と、被害報告が少ない空知・上川地方の6林分にそれぞれ0.1haのプロットを設定し、毎木調査を行った。各林分の枯死率は0~69.5%で、地域的な広がりはないものの、道東地方以外でも大量枯死が発生していたことが明らかとなった。生立木のならたけ病感染率がもっとも高かったのは足寄の57年生林分(94.1%)であった。 3)大量枯死原因の解析: 枯死木92本の90.2%にキクイムシ穿孔、ナラタケ属菌感染のいずれかもしくは両被害が確認できた。両被害を同時に受けていた枯死木は53.3.%(49本)であった。一方、両被害を受けながら生残していた生立木はなかったことから、これらが重なるとカラマツは確実に枯死するものと推察される。生立木のキクイムシ被害はあまり発生しておらず、1林分でのみ穿孔が確認された。一方、ならたけ病の感染率は高く、生立木全体の49.5%が同病に感染しており、空知・上川地方よりも道東地方の林分で感染率が高かった。被害木上の根状菌糸束から得たナラタケ属菌の菌株は、いずれもこれまで針葉樹に対する病原性が低いとされてきたホテイナラタケ、もしくは、クロゲナラタケに分類された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね当初の予定どおり進捗している。 研究項目2)で主調査地とする予定であった十勝地方のカラマツ伐採事業が2022年度もコロナ禍により激減しており、剥皮調査の許可が得られた林分が限定された。そのため、2022年度には被害多発地の十勝地方で4林分、被害多発地外である空知地方2林分、合計6林分でカラマツの衰弱状態と病虫害に関する詳細調査を実施した。 地上部にならたけ病の症状がない個体であっても、A0層を除去した根元の観察では病原菌の“根状菌糸束の外樹皮への貫入”が認められる場合があることが本研究の過程で明らかとなった。これはならたけ病感染の初期状態と考えられたため、ならたけ病調査ではカラマツ全個体を対象に、樹幹周囲のA0層除去をともなう根元の観察を実施することとした。R4年度には、各林分の根状菌糸束から分離したナラタケ属菌の同定をすすめた。
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今後の研究の推進方策 |
森林活用課美唄普及指導員室、森林室普及課など関係機関と連携し予定どおり研究をすすめる。R2-4の研究期間中、コロナ禍にともなう伐採事業の減少により剥皮調査が許可された林分が少なかったので現地調査に支障が生じた。研究期間を変更(1年延長)してデータ数を増やす。
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次年度使用額が生じた理由 |
R2-4の研究期間中、コロナ禍にともなう伐採事業の減少により剥皮調査が許可された林分が少なかったので現地調査カ所数が減った。その結果、旅費と実験に係る使用額が予定より少ない結果となった。研究期間を変更(1年延長)して現地調査を追加するともにナラタケ属菌のDNA 解析をすすめて、研究費を使用する。
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