マツ材線虫病に感受性であるクロマツでは、本病の被害林分に残存している健全木やその実生苗に病原体マツノザイセンチュウ(以下、線虫)を接種することで、抵抗性系統(本病に感染しても枯死しにくい特性を有する系統)を選抜するが、この系統が枯死しにくい原因や、本病の発病機序については詳細な調査が必要である。 本研究では、①線虫を接種した抵抗性クロマツの樹体内における線虫の詳細な分布の経時変化を調査することにより、線虫非感染で再増殖可能な穂が採取できる接種後の期間などの条件を特定すること、さらに、②クロマツ樹体内における接種線虫の詳細な分布を評価できる技術を開発することを目的とした。 ①では、同時期に約20系統の抵抗性クロマツ接ぎ木苗を増殖して、線虫の接種を行い1週間毎に10週間後まで接種苗の生死の有無を調査し、生存曲線を作成した。このうち、生存曲線に有意差が確認された2系統(生存率が高かった1系統、低かった1系統)について、同時期に採取して枝齢別にLAMP法(マツノザイセンチュウのDNA検出)による感染確認とベールマン法により抽出された個体数の調査を実施した。その結果、何れの系統においても大部分の主軸や枝から線虫DNAが検出されること、主軸の接種位置付近のみから僅かに生存線虫が確認されることなど、予備試験と同等の結果が得られた。この結果については、必要な追加分析を実施後に速やかに投稿論文として取りまとめる。②では、接種線虫の樹体内分布の詳細を評価できるイメージング解析の手順を整備し、投稿論文として取りまとめた。
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