研究課題
日本国内において、コナラ林は生物起源の揮発性有機化合物(BVOC)であるイソプレン(C5H8)の主要な放出源となっている。イソプレンは、地球の大気科学において重要なオゾンや二次有機エアロゾル(SOA)を生成していると考えられているが、非常に低濃度の微量ガスであることから野外連続観測が難しく、実態把握が遅れてきた。そのため、本研究ではコナラ林内での野外観測に適したイソプレンフラックスの観測手法を開発すると共にイソプレンの放出特性と酸化過程の評価を行った。初めに加熱脱着法と化学発光法を組み合わせたイソプレン計により、コナラ林内でイソプレン濃度を連続分析できる体制を確立した。次にこのイソプレン計と簡易渦集積法(REA法)、コナラ林内の微気象観測タワー上を用い、大気-森林間のイソプレンフラックス観測を実現した。同時に2高度におけるイソプレンとオゾン濃度の経時変動の連続観測も実現した。最終年度は引き続き前年度までに開発したこれらの観測体制を用いた野外観測を実施した。野外観測の結果、イソプレン濃度は午前中に樹冠下部で樹冠上部より早い時間帯に高まり、正午以降にピークを形成した後、減少する日変動を繰り返していることが確認された。またオゾン濃度の日変動特性もイソプレンと概ね一致していた。イソプレンフラックスは正午頃に鋭い放出のピークを示し、これは貯留変化量の変動の影響を受けていた。コナラ林においてはイソプレンが従来の放出モデルで想定されてきたより朝の早い時間帯から放出されており、これが森林において日中にイソプレン放出とオゾン生成に寄与している可能性が考えられた。
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