研究課題/領域番号 |
20K06132
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
河合 慶恵 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (20370851)
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研究分担者 |
池田 武文 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 特任教授 (50183158)
市榮 智明 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (80403872)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スギ精英樹 / 水分生理特性 / 幼老相関 / 選抜指標 |
研究実績の概要 |
本課題は、スギの水分生理特性における幼老相関を明らかにし、この特性を今後の林木育種で開発される優良個体の早期選抜指標として活用するための基盤情報を得ることを目的としている。2021年度は、愛媛県に設定された1箇所の壮齢なスギ産地試験林において毎木調査を実施したのち、成長錐および枝サンプルを採取した。採取した枝サンプルを用い、冬季の浸透調節機能(冬季乾燥耐性の指標)を評価した。なお本試験林と同一系統が共通植栽されている、兵庫県に設定された壮齢な産地試験林においても、同様の評価をこれまでに実施している。 本課題に先だって実施した幼苗の乾燥ストレス実験において、実験に供試したスギさし木苗を用いて冬季の浸透調節機能の測定を行った。なお幼苗の実験で用いたスギ精英樹15系統は、上述したスギ壮齢産地試験林に共通植栽されている。幼苗で得られたデータと二か所の産地試験林での測定結果を統合し解析した結果、兵庫県の試験林において冬季の浸透調節機能は幼苗と成木の異なる成長段階間であっても共通性がある(幼老相関がある)ことが認められた。しかし、愛媛県の試験林では有意な幼老相関が認められなかった。 また、上述したスギ精英樹と同じ15系統が共通して植栽されている43箇所の産地試験林において、これまでに調査された生存率データを前年度中に全て再精査した。本データはスギ系統の幼苗における生理・形態的特性と、成木における生存・成長との関連性を検証するために用いる予定であるが、この解析に先立ち、5年次から20年次の生存率データを用いて、試験林間での系統の順位変動の程度を解析した。生存率における偏差値に基づくクラスター分析の結果、15年次では瀬戸内・近畿地域に同じクラスター区分の検定林が集中する傾向を示し、この地域では系統の生存パターンが類似することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画に沿って産地試験林の毎木調査および冬季の浸透調節機能の測定を進めた。またこれまでに得たデータの解析を進め、年度内に三回の学会発表を行った。こうした実績から、本年度の目標をある程度は達成できたと考える。しかし2021年度中に愛媛県の試験林より採取した成長錐の年輪幅を測定するとした当初計画を達成できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は愛媛県の産地試験林より採取した成長錐の年輪幅を測定する。過去の気候変動に対する成長応答について解析するため、愛媛県と兵庫県で取得した年輪幅データの標準化を行う。本課題において産地試験林で取得した成長・生理特性データと、これまで蓄積してきた幼苗段階のデータを統合し、水分生理特性の成長・生存への影響と幼老相関について議論しとりまとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
台風による林道崩壊により、2020年度に予定していたサンプル採取が不可能となった。このため、採取に関連して使用する予定だった旅費および、サンプルを測定・分析するため予定していた試薬や謝金等を使用しなかったため次年度使用額が生じた。2021年度は前年度に実施できなかったサンプル採取等を加えた使用計画を予定したが、全ての計画を実行することはできず、さらに次年度使用額が生じた。
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備考 |
所属研究機関の発行紙「関西育種場だより」95号(2021年7月発行)に「系統の生存パターンに基づいて検定林を区分する試み」を掲載した
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