研究課題/領域番号 |
20K06134
|
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
阿部 俊夫 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353559)
|
研究分担者 |
久保田 多余子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353670)
釣田 竜也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30353775) [辞退]
小川 泰浩 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50353628)
伊藤 優子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60353588)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 間伐 / 多雪地域 / 浮遊土砂 / 水流出 / 水質 / 融雪 |
研究実績の概要 |
多雪地域の森林において間伐が水・土砂等の流出におよぼす影響を明らかにするため、釜淵森林理水試験地で水・土砂等の流出量の変化について観測を実施した。本試験地は1939年に開設された長期森林理水試験地であり、4つの流域(1号沢~4号沢)を有するが、近年2018年秋に4号沢および2号沢の一部で間伐が行われた。 令和3年度(2021年)についても基本となる水文・気象観測を継続し、濁度計および自動採水器による渓流の浮遊土砂観測を行った。自動採水器で採取した渓流水は浮遊土砂濃度の分析のほか、分担者(伊藤、久保田)に送付して溶存物質と安定同位体比の分析もおこなった。また、4号沢および無施業の1号沢では土壌水の採取もおこない、分担者が溶存物質と安定同位体比の分析をおこなった(無積雪期のみ)。さらに冬季の積雪深を明らかにするため、3月上旬に分担者の小川らとドローンを用いた積雪調査を実施した。 渓流の浮遊土砂流出に関しては、4号沢で間伐直後に著しい浮遊土砂流出が生じたが、翌年以降は目立った土砂流出は認められず、2021年には未施業流域と同程度まで流出量が減少した。作業道や間伐林床における微細土生産量も、草本植生の回復やリター被覆により減少した。溶存物質や安定同位体比、空撮データ等については、現在、分担者が解析中である。水流出量については間伐による明らかな影響は認められなかったが、過去の長期データを用いた解析から、皆伐をおこなうと春季の融雪流出量が増加し30~40年で伐採前のレベルに戻ることが明らかとなった(論文投稿中)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地観測については、ほぼ予定通りに実施できた。2021/2022年冬季は大雪であったが、冬季のドローン調査も無事に完了した。渓流水や土壌水の分析については2021年度に分担者が変更となったが(釣田→伊藤)、引継ぎはうまく行っており、水質分析は順調に進んでいる。安定同位体比については分析装置の不調で分析が遅れていたが、今後、成果が得られる見通しである。また、間伐ではないが、皆伐が融雪流出に与える影響についても過去の長期水文データ等を用いて解析できた。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的には現在の調査・観測を継続し、間伐後の時間経過にともなう水・土砂流出の変化を明らかにする。溶存物質や安定同位体比、空撮データ等については分担者に解析を進めてもらい、学会等での成果発表を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍が続いており、打合せの出張が制限されたほか、学会発表もオンライン開催となり、国内旅費を中心に余剰が生じた。 令和4年度については現在の調査・観測を継続するため、現地調査に係る交通費・旅費、サンプルの分析に係る試薬等の消耗品購入などに予算を使用する計画である。冬季のドローン調査も、当初は課題期間中に数回だけの計画であったが、次の冬季にも原則実施することとする。
|