南アルプス山域での標高2000~2737mにおける樹木への剥皮の影響を把握した。調査は、白根御池小屋までの尾根道中腹から、通称右俣および草すべりのダケカンバ林および高茎草原、北岳山荘下、農鳥小屋下で実施した。10×40mの調査区を19カ所設定し、調査区内の胸高直径3cm以上の立木を対象にした毎木調査を実施した。またニホンジカによる剥皮の有無も記録した。この調査を2014年、2018年、2022または2023年に実施した。 標高が高いほどダケカンバを主とする広葉樹が多くなる傾向が見られた。2014年と比較して2023年で立木本数が増加していた調査区は1、同じであった調査区は2、減少していた調査区は16で、ほとんどの調査区で立木本数は減少していた。標高別の剥皮率(調査区内の立木本数に対する剥皮されていた本数の割合)の変化を示した。2200m付近で剥皮率が高く、標高が高くなるにつれて低下する傾向が見られた。2014年と比較して2023年で剥皮率が増加していた調査区は11、同じであった調査区は4、減少していた調査区は4で、多くの調査区で剥皮率は増加していた。枯死木のうち剥皮されていた本数の割合は、19調査区の平均で2014-2018年が19.2%、2018-2023年が19.7%であった。しかし、標高2000mの調査区における、2014-2018年でのその割合は100%、2240mで92%と非常に高い割合であった。 また、過年度に実施した標高別のニホンジカ剥皮による枯死率の変化および亜高山帯植生の変化と摂食の影響の結果については国際誌に投稿中である。
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