研究課題
令和4年度は,福島県内の常緑針葉樹林と落葉広葉樹林を対象に,雨水やリターフォール,枝葉及び外樹皮の採取を実施した。雨水及びリターフォールの採取は月1回程度の頻度で,枝葉等の採取は7月に実施した。採取試料は実験室に持ち帰り,前処理を行った。雨水は0.45μmのメンブレンフィルターにより懸濁成分を分離した。植物体は炉乾燥した後に,ミルで粉砕した。処理済みの試料に含まれるガンマ線放出核種濃度を,ゲルマニウムガンマ線検出器を用いて定量した。現地調査で採取した試料のほかに,筑波大学アイソトープ環境動態研究センターサンプルアーカイブ施設に保管されている事故初期の雨水サンプルについて,溶存イオン及びPb-210濃度の分析を実施した。本研究課題の実施期間中に取得した観測・分析データをとりまとめ,調査森林樹冠の水収支とリターフォール堆積速度を算出した。また,雨水にともなって樹冠から林床へ移行する溶存元素及び放射性核種の沈着フラックスを定量化した。さらに雨水と枝葉の放射性核種濃度を比較することにより,樹体から雨水への移行係数の時間変化を調査した。以上の観測調査により,大気からの沈着パターンが異なる放射性核種の大気-森林-林床でのフラックスを定量化した。また,福島原発事故由来の放射性セシウム濃度の長期観測データを用いて,樹体-雨水間での移行速度が初期沈着からの時間経過とともに変化することを明らかにした。本研究により,森林における降下放射性核種動態をトレーサーとして,森林に沈着する大気降下物質の樹冠遮断率や,林床への移行経路及び移行速度,林床の沈着量分布を推定できることが示唆された。以上の研究成果の一部について,国際学術誌に成果を原著論文として発表するとともに,日本原子力学会秋の大会(2022年9月,茨城県日立)及び第134回日本森林学会大会(2023年3月,オンライン)において口頭発表を行った。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Science of The Total Environment
巻: 151698 ページ: 1-12
10.1016/j.scitotenv.2021.151698
Journal of Environmental Management
巻: 314 ページ: 1-10
10.1016/j.jenvman.2022.115064
Environmental Science & Technology
巻: 56 ページ: 15541-15551
10.1021/acs.est.2c03451