研究課題/領域番号 |
20K06143
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
城田 徹央 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (10374711)
|
研究分担者 |
岡野 哲郎 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (00194374)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 強度間伐 / ヒノキ人工林 / 低木 / 樹形 / 純一次生産 / モニタリング |
研究実績の概要 |
強度間伐を実施した80年生ヒノキ人工林において,間伐後10年目,15年目,20年目に採取された低木サンプルについて諸量の再解析を行い,1)樹冠構造データの解析とバイオマス推定式の構築,2)樹冠発達過程の復元,3)純一次生産量の推定を行った。 1)低木層を構成する樹木の樹冠構造を10年前,5年前のデータと比較した。その結果,生活形による違いが認められた。まず,高木性樹木はアロメトリー関係が変わっていなかった。これに対し,低木性樹木は樹冠構造を可塑的に変化させた。この中には樹冠を傘型に変化させ受光効率を最適化するタイプと,葉の重なりは変わらないか増えるが葉への投資を増やすことで受光量を増やすタイプがあることが明らかになった。 2)傘型樹形に変化させるタイプであるクロモジについて,芽鱗痕から伸長成長量を計測し,成長過程を復元した。まず,枝分かれを伴うシュートが長枝的機能を,枝分かれを伴わないシュートが短枝的機能を有していることが明らかにされた。次に過去12年間の長枝数と短枝数の変動を解析した結果,林冠が閉鎖し始めた8年前から急速に長枝数が減少し,短枝に置き換わっていくことが明らかにされた。すなわち樹形形成の可塑的応答にタイムラグがなく速やかな応答をしていた。 3)10年前と純一次生産を比較した結果,上層のヒノキの炭素固定能力が向上し,低木のそれが減少した。低木は固定された炭素の成長への配分を減少させているが,葉への投資を一定に保持していた。このことは低木の落葉による物質循環機能が持続されていることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナパンデミックの影響のためフィールドでのサンプル採取が限定され,主に既存のモニタリングデータの解析が主となった。特に間伐直後から10年までの下層植生の植生調査とバイオマス調査が実施できていない。ただし,調査地である信州大学農学部附属演習林において過去の施業履歴を調べ,現地踏査を完了したので,次年度には速やかに実施できる段階にある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後のコロナ禍の影響が計れないので,優先順位を変更する。 まず,モニタリング調査地で得られた既存データを用いて論文執筆にとりかかる。 また,間伐後10年以内のヒノキ人工林で植生調査とバイオマス調査を行う。 最後に,2022年度以降にモニタリング調査地におけるバイオマス調査が可能であれば,これを実施する。2021年度末時点での検討事項とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により計画変更を余儀なくされた。特にサンプル採取を断念したため,当初計画において計上したサンプル計測補助の人経費を次年度に使用することとなった。
|
備考 |
学生2名が中部森林学会の学生発表優秀賞を受賞した。
|