研究課題/領域番号 |
20K06146
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
中島 千晴 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (20378318)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 樹病 / 植物病原菌 / 分類 / 種分化 / 病原性 |
研究実績の概要 |
特定の重要樹木病原菌を属レベルで選抜し、それらを異なる植物群系ごとに分類学的再検討を行い、種多様性を比較検討することを目的に研究を実施している。本年度も海外出張が不可能であったことから新規のサンプルについては日本国内産の樹木に寄生して病害を引き起こす植物病原菌の種多様性と、国外で欧州を中心に報告されている種を国内外の研究者と共同で比較検討を行った。結果、樹木の胴枯性病害に関与するBotryosphaeria属菌、Neofusicoccum属菌、Lasiodiplodia属など日本産種の分子系統関係や培養性状を明らかにするとともに、これらの結果を基に、これまで記録されている以上に種多様性に富んでいること、日本国内で海流分散や島嶼効果による種分化が見られることを論文として発表した。また、熱帯果樹を始めとする植物に広く病害を引き起こすColletotrichum gloeosporioides種複合体の迅速診断技術としてLAMP法を用いて検出する技術を開発し、海外での普及を考え、海外の国立研究所が発行するオープンアクセス誌に論文として発表した。さらには海外の共同研究者の協力を得て、Pseudocercospora属菌の基準菌株を用いた包括的系統樹とその種バーコードを提案する研究を推進し、投稿した(審査中)。また、口頭発表として、樹木医、森林総合研究所、公設試験場との共同研究としてキリ腐らん病等を引き起こすCystospora属菌の分類学的再検討の結果を速報し、病原菌の分類学上の問題と命名法上の問題を議論する研究会にて招待講演を1題行った。本年度はこれらの成果が国際誌4報に掲載され、2報が審査中で、学術集会にて4題の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大により出張が制限されているが、国内をはじめ世界各国の共同研究者の協力により、植物病原菌の分子系統データやデータセット、標本の貸し出しや、菌株の分譲の便宜を受けて研究を遂行している。これらの成果が順調に公表されており、現在審査中の論文も2報とおおむね順調に進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
海外渡航が可能になり次第、直ちに出張を行い、当初の比較検討の対象としていた地域に渡航し、特定の地域との比較を実施する必要がある。しかしながら、予定した東欧地域の情勢が不安定であり、もう一つの対象地域であった東南アジアに注力した見直しが必要である。現時点では昨年度の対応と同じく、国内研究機関をはじめ世界各国の共同研究者の協力をうけ、植物病原菌の分子系統データやデータセットの構築、標本庫収蔵標本の貸し出しや、菌株の分譲の便宜を受けて研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
[理由] コロナ禍のため予定していた海外や野外でのサンプル採集が叶わなかったため。 [使用計画] 現地調査及び成果発表に使用する予定である。
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