研究課題/領域番号 |
20K06152
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
北村 系子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00343814)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 潜在逃避地 / 北限 / 分布変遷 |
研究実績の概要 |
ブナ属は北半球の温帯林を代表する樹種であり、ヨーロッパ大陸や北米大陸においても温帯林の分布変遷を知る上で重要な位置を占める。1980年代に公表された多くの花粉分析研究では、ブナ属をはじめとした温帯性樹木は大陸氷河に覆われていなかった南方の逃避地から完新世の温暖化に伴って北上し現在の分布域に達したとされていたが、近年の分子マーカーを使った研究によって高緯度地域に最終氷期の潜在的逃避地(クリプティック・レフュージア)が存在したことが明らかになってきた(Bradshaw et al. 2010)。大陸氷河の影響が少なかった日本列島においては、潜在的逃避地の可能性が高いだけでなく複数存在したことも考えられる。本研究により多数の分子マーカーを使って潜在的逃避地の存在を明らかにすることは、東アジアの温帯林では初めての試みであり北半球の温帯林の分布変遷を考える上で意義がある。とくにブナを含む冷温帯林は南部の暖温帯林および北部の北方針葉樹林との競合しながら分布変遷を遂げた生態系として、日本列島の森林帯を理解する上で重要な研究として位置づけられる。調査地となる北日本のブナ天然林の所在地等の情報を事前調査と資料収集によって入手し、現地調査に入る準備は整えた。DNAの抽出、核SSRおよびEST-SSRマーカーを用いた遺伝子多様性解析、次世代シーケンスサンプル調整を行なった。次世代シーケンス(NGS)解析によるSNP探索ではゲノムワイドに情報を得ることができるMIG-seq法を用い、2段階の絞り込みで用いる選択的プライマーの予備実験によってブナで380座のSNPのジェノタイピングを行えること、得られた遺伝子座はコアレッセント解析に有効であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
緊急事態宣言(北海道および札幌市独自の外出制限を含む)中に、県境をまたぐ調査を行えなかったため、東北地方の現地調査を次年度以降に延期した。
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今後の研究の推進方策 |
緊急事態宣言(北海道および札幌市独自の外出制限を含む)が継続した場合は、当初計画の現地調査を最小限にする。方法としては、調査地点を少なくする予定である。調査範囲は変更せず、地域を代表する集団を選び出し、最小限の移動に抑える。実験分析および解析については、計画通り行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
緊急事態宣言(北海道および札幌市独自の外出制限を含む)の状況下により当初計画していた現地調査を控えたため旅費の支出がなかった。次年度に延期した現地調査を行うための旅費として使用する。また、現地調査を行わなかったため、分析個体数が減少し、試薬購入費が予定額を下回った。これについても、次年度に試料を採取し分析を行う費用として使用する。
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