研究課題/領域番号 |
20K06153
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研究機関 | 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター |
研究代表者 |
田中 憲蔵 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 林業領域, 主任研究員 (30414486)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | カエンボク / 外来種 / 侵入 / シンガポール / 熱帯雨林 / モルッカネム / 萌芽 / 林分構造 |
研究実績の概要 |
外来種は在来種と競合し、地域の森林生態系の動態や多様性などに影響する場合がある。特に、かく乱後に成立した二次林では外来種の侵入が起こりやすい。東南アジアの熱帯雨林地域でも中南米やアフリカ原産の外来種が定着し、現地の二次林植生に影響を与えているようだが知見は限られている。本年度は、西アフリカ原産のカエンボク(Spathodea campanulata)に着目し、シンガポールの二次林に侵入したカエンボクのサイズ分布など林分構造や萌芽特性について調査を行った。調査はシンガポールのブキティマ森林保護区の二次林に10×10mのプロットを20か所設置し、胸高直径(DBH)が5㎝以上の樹木全個体のサイズと樹種名を記録した。 全プロットに出現した樹種は総計30種で、このうち外来種はカエンボクと西アフリカ原産のBaphia nitidaの2種であった。DBHが100cmを超える個体はいずれもカエンボクで3個体あり、最大個体の樹高は約26mであった。各プロットのカエンボクの個体数割合は平均43%で、胸高断面積割合では74%と優占していた。個体数はCinnamomum inersとChisocheton patensが2番目と3番目に多くそれぞれ9%と8%を占めたが、胸高断面積割合ではそれぞれ1%と3%と少なかった。この理由として、カエンボクはDBH50㎝を超える個体が約2割を占めたのに対し、これら2種は無かったためと考えられた。カエンボクの直径階分布は小径木の数が多いL字型分布をしており、更新が継続して起こっていた。林内での更新状況を観察したところカエンボクは強い萌芽能力を持ち、大径の親木が根返りや著しい損傷を受けても萌芽再生していた。カエンボクのうち、萌芽幹を持つ個体の割合が40%以上で、幼木では90%近くが萌芽由来であった。Ci. inersやCh. patensなど他の樹種は、萌芽幹を持つ割合は10%未満と低く、カエンボクの強い萌芽能力はかく乱頻度の高い二次林での侵入や定着に貢献していると結論付けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナのため研究進捗が遅れていたが研究期間を延長したことでプロット設置など目標をクリアしたため。
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今後の研究の推進方策 |
今回設置したカエンボク優占林分のプロットを継続して測定することにより、森林動態解析に必要な成長量や枯死率などのパラメータを実測し、外来種の侵入を考慮した熱帯雨林の森林動態予測につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の大部分がコロナ禍のため現地調査が困難になったため次年度使用額が生じた。 研究期間は令和4年度までであったが、R5年度に延長を行いさらにR6年度に研究期間を延長し研究推進を行う。そのために必要な旅費、調査道具などの物品費、成果公開のための費用等に適切に使用する計画である。
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