研究課題/領域番号 |
20K06155
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
山下 尚之 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30537345)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デジタルソイルマッピング / 空間推定 / 機械学習 / k平均法 / 最適サンプリング / 土壌特性値 |
研究実績の概要 |
生態系サービス機能の可視化を目的とした土壌特性値の機械学習マッピングが急速に発展するとともに、マッピング精度を高めるための地点選択の最適化(最適サンプリング)が注目されている。本研究は、最適サンプリングの有効性を検証することにより、日本の山地の複雑地形における土壌採取地点選択の問題点を克服し、次世代の土壌サンプリング技術を提案することを目的とした。本年度は、新規サンプリングは実施せずに既存の多点土壌調査データを用いたシミュレーションを実施した。北関東の山地小流域試験地における約600地点の土層厚測定データを用い、全観測地点からk平均法、(疑似)格子点、ランダムの3つの手法によって地点を選択し、各手法で得られたサンプルセットによる機械学習マップの精度をR2とRMSE(10倍交差検証)を用いて比較した。k平均法による分類には高解像度DEMから算出した地形因子(傾斜、斜面方位、曲率、TWI等)を用い、これら複数の要因がバランスよく考慮された地点が選択された。この実験は各手法で複数の選択地点数(20~400地点)を想定して実施され、50回反復における平均精度を算出した。k平均法に対し、ランダム法は確率による精度の変動幅が大きく、格子法も基準点の設置位置で精度が大きく変動した。一方、サンプル数が多くなると、手法の差よりもサンプル数の増加による精度の向上が卓越した。したがって、小流域スケールで測定地点数を少なめに設定する必要がある場合、k平均法が従来法よりも有効なサンプリング手法であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は現地調査を実施することができなかったものの、当初の計画に沿って既存の多点サンプリングデータを活用することにより、ワークステーション上での模擬サンプリング実験を中心に解析を進めることができた。模擬サンプリング実験に必要なR言語による解析スクリプトを新たに作成したほか、これを用いて最適サンプリングの一つであるk平均法の有効性を実際に確認することができた。特にサンプリング数による有効性の差について、「サンプリング数が少ないほどk平均法の効果が高い」という新たな知見が得られたことで、次年度以降の現場でのサンプリング計画に対する示唆が得られた。以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度と同様の模擬サンプリング実験をより広域のデータセットを対象にして実施する。また、k平均法に加えて条件付きラテン超方格法等の複数の最適サンプリング手法を検討して比較する。一方、追加サンプリング実験として、地理的に偏りのある点で土壌採取が実施されたためにマッピング精度が低いデータに対して追加サンプリング法(Spatial Simulated Annealing法など)を適用し、新たなサンプリング地点を効率的に設定する。数回の現地調査によってこれらの地点の土層厚を実際に測定し、追加サンプリングによる新たなデータセットを用いた機械学習マッピングの精度と、以前のデータセットによる精度を比較する。これにより、最適サンプリング法を考慮した追加サンプリングの効果を検証する。さらに研究協力者である橋本昌司氏とも連携して、科学研究費課題「微地形に起因する環境の違いを組み込んだ土壌温室効果ガス推定の高解像度化」(19H03008)の調査対象地域におけるガスフラックス測定地点を上述のk平均法・ラテン超方格法によって選択し、得られたガスフラックスデータを共有して解析することにより、新規調査地に最適サンプリングを適用することによる効果(対象面積・時間効率など)を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために当初予定していた予備調査が延期となったことに加え、ワークステーションの購入費が想定よりも安価であったため。本繰越金は、次年度調査の出張費として使用する予定である。
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