機械学習による土壌特性値のマッピング技術が近年急速に発達するとともに、マッピング精度を高めるための地点選択手法の開発ニーズが高まっている。例えば共変量サンプリングは、標高・衛星データなど土壌特性値との関係性が予想される共変量を用いて対象地域内の土壌調査地点を事前に決定する。本研究では、重要な土壌特性値である土層厚と土壌炭素に着目し、その空間変動を明らかにするための様々な地点選択手法の有効性を検証した。 最終年度は、これまでに構築・整備した5つの既存データセットから複数の地点選択手法によってデータを選択し、これを利用した機械学習マッピングの精度を評価する模擬サンプリング実験を実施した。その結果、3つのデータセットについて、共変量サンプリングによるマッピング精度がランダムサンプリングより高い傾向が認められた。さらに本手法の有効性を確かめるため、新たに設置した約120haの調査エリアにおいてランダムサンプリングと共変量サンプルリングによる地点選択を実施した。各地点で実際に土層厚を測定してマッピングした結果、共変量サンプリングによるマップの精度はランダムサンプリングによるマップの精度より高く、その有効性が確かめられた。 本課題では全期間を通じて1)手法のレビュー、2)評価スクリプトの開発、3)既存データの収集・整備と模擬サンプリング実験、4)新規サイトでの実証試験、により特に共変量サンプリングの有効性を検証した。さらに、本手法に不可欠な高精度GNSSの有効性や、足切りデータや既存データセットの有効活用など、土壌マッピングにおける従来の懸案事項についても検討を加えた。本手法を活用したより精度の高い土壌の空間情報の整備は、適切な炭素管理や防災機能評価等の行政ニーズへの貢献が期待される。
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