近年、中大規模の木造建築物が建設されるようになってきた。木造建築物が中大規模化されると部材の断面も大きなものが使われるようになる。部材断面の大きさを有効に活かした接合法として、鋼板を複数枚挿入してドリフトピンで接合したものがあるが、研究はほとんど行われていなかった。そこで本研究では、鋼板の配置と枚数を変化させた鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部に静加力試験および仮動的試験を行うことで、接合部のせん断挙動および振動特性を解明し、接合性能が最大となる接合寸法を示すことを目的とした。令和4年度は接合寸法を変化させた接合部の仮動的試験を行った。 接合部は、E105-F300カラマツ集成材に9mm厚鋼板を1枚挿入したものと、2枚挿入したものを用意し、直径12mmのドリフトピン8本で接合した。集成材の材厚は150mm、材幅は330mm、材長は1356mmとした。令和3年度までの研究で、鋼板間隔が80mmのときに接合性能は最大となったため、鋼板2枚挿入接合の鋼板間隔は80mmとした。ドリフトピンは円形配置とし、回転中心からドリフトピンまでの距離は112mmとした。 静加力試験より得られた接合部の初期剛性より、接合部の固有振動数は1Hzから2Hzの間にくることが予想された。そこで仮動的試験は5Hzから1Hzまで1Hzずつ変化させて行った。入力波は正弦波とした。静加力試験の結果より、長期許容耐力相当の値から加速度を求め、この加速度を振幅とした。振幅は一定で周波数を変化させた仮動的試験より、周波数5Hzのときが応答変形は一番小さく、4Hz、3Hzと周波数を変えるほど、応答変形は大きくなり、周波数1Hzのときが最も大きな応答変形を示した。
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