研究課題/領域番号 |
20K06158
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
浅田 隆志 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (60434453)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炭素化 / 可視光応答型酸化チタン / 光触媒 / 木質バイオマス / バイオ炭 |
研究実績の概要 |
窒素をドープした可視光応答型酸化チタンをボールミル処理によりスギおが屑に担持し炭素化することで,可視光応答型酸化チタン担持スギ炭素化物を簡便に作製し,水や空気の浄化材として活用することを目的として,炭素化温度等の作製条件が,細孔構造や担持した酸化チタンの分散性等の表面特性,メチレンブルーの吸着性能および酸化分解性能に与える影響を検討した。 アナターゼ型酸化チタンと窒素源として炭酸アンモニウムをボールミル処理し,さらにスギおが屑を加えボールミル処理した後,炭素化することにより,簡便に可視光応答型酸化チタン担持スギ炭素化物を作製できることが明らかとなった。スギ炭素化物表面に酸化チタンが全体的に分散担持されていることが走査型電子顕微鏡による観察により確認され,チタンとして4~12質量%の酸化チタンが担持されていた。ボールミル処理時の回転速度の影響を検討したところ,回転速度が500 rpmでは担持された酸化チタンがアナターゼ型からルチル型に転移し光触媒性能が低下することが分かった。 400℃と700℃で炭素化した結果を比較すると,スギ炭素化物の細孔発達およびメチレンブルー吸着量から,700℃で炭素化した場合の吸着性能の方が高いことが示された。可視光照射時のメチレンブルー退色性能に対しては炭素化温度の影響が小さく,いずれの炭素化温度でも可視光照射によりメチレンブルー溶液が退色したことから,窒素ドープ酸化チタン担持スギ炭素化物の可視光応答性が確認された。一方,スギおが屑に担持する前に窒素ドープ酸化チタンを400℃で焼成した後,スギおが屑に担持し炭素化した場合では,可視光応答性が大きく低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究計画は窒素ドープ酸化チタンの調製方法,炭素化温度等の作製条件が窒素ドープ酸化チタン担持スギ炭素化物の表面特性や吸着・有機物の酸化分解性能に与える影響を明らかにすることであった。 ボールミル処理の回転速度,炭素化温度,担持前の熱処理の有無等の調製条件が細孔特性,担持量,酸化チタンの結晶相,分散状態に与える影響を評価し多くの知見を得た。2020年度の研究で明らかとなった重要な知見は主に次の4点である。①本研究で検討した方法により簡便に窒素ドープ酸化チタンを担持したスギ炭素化物を作製でき,可視光照射下におけるメチレンブルー分解性能が確認された。②窒素ドープ酸化チタンをボールミルで調製する場合,ボールミル回転処理速度が可視光照射下におけるメチレンブルー分解性能に与える重要な因子である。③炭素化温度は,メチレンブルー分解性能よりも炭素化物としての吸着性能に影響を与える因子である。④可視光応答型酸化チタンをスギおが屑に担持する前に焼成した場合,メチレンブルー分解性能は大きく低下したことから,スギおが屑への担持は熱処理による可視光応答性の低下を抑制する効果がある可能性が示された。 これらの研究成果について2件の学会発表を行った。 2021年度以降に実施を計画していた鉄ドープ酸化チタンに関する研究を2020年度末に開始した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である異種元素をドープした酸化チタンをボールミル処理によりスギおが屑に担持した後,炭素化することで可視光応答型酸化チタン担持スギ炭素化物を調製し,その表面特性と吸着性能,有機物の酸化分解性能を明らかにする研究を計画通り実施する。 当初の予定では2021年度に硫黄ドープ,2022年度に鉄ドープについて2020年度と同様に検討する予定であったが,予定を変更して2021年度に鉄ドープ酸化チタンについて検討し,鉄ドープ酸化チタン担持スギ炭素化物の調製条件が表面特性,吸着性能,有機物の酸化分解性能に与える影響を評価する。 検討の順番を変更するが,研究内容について変更はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を学会発表するための旅費を確保しておいたが,今年度は学会がオンライン開催になったため,旅費として確保しておいた分の残額が生じた。今年度の残額分は,今年度の予算内で購入できなかったカラムオーブンの購入のために使用する。
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