石油資源枯渇への懸念や温室効果ガスによる温暖化、プラスチックによる環境汚染などの環境問題が社会的な課題となっている。植物などの生物資源を原料としたバイオマスプラスチックや環境中で微生物により分解を受ける生分解性プラスチックなどのバイオプラスチックがその解決策の一つとして注目されている。バイオプラスチックは未だ種類が少なく、スーパーエンジニアリングプラスチックに匹敵するような高い耐熱性や力学特性を有する新たなバイオマスプラスチックや、十分な耐久性を持ちつつも使用後には確実に環境中で分解するような新たな生分解性プラスチックの開発が求められている。本研究では、木質由来のリグニンの廃棄物などから得られるバイオマス芳香族化合物であるジバニリン酸を原料に用いた新規芳香族バイオプラスチックの開発を行った。2020-2021年度はジバニリン酸を用いたポリエステル、ポリアミド、ポリケトンなどを合成し、200-300℃以上の優れた耐熱性と約60-70MPaの強度を有するフィルムの作製などに成功した。ジバニリン酸の水酸基に長さの異なるアルキル鎖を導入することで熱機械特性の制御が可能であった。2022年度は、ジバニリン酸のみから構成されるオールバイオマス芳香族ポリアミドの合成、ジバニリン酸を用いた動的ネットワーク構造を有するバイオマスビトリマーの合成について報告した。さらに、ジバニリン酸の水酸基を遊離させた状態のポリエステルの合成法の確立、物性制御、酵素分解性や環境分解性の評価についても報告し、新しい生分解性バイオマスプラスチックの可能性を提案した。
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