研究課題/領域番号 |
20K06163
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
田中 孝 静岡大学, 農学部, 助教 (40612700)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 木材接着 / 破壊 / 劣化 / X線CT / 可視化 |
研究実績の概要 |
近年、木質資源の有効活用や大規模木造建築の推進のために、木材接着が不可欠な技術になりつつある。各種木材接着製品に最適な木材接着技術を選定してその要求性能を確保するには、接着性能が発揮されるメカニズムを把握しておくことが肝要であるが、木材接着強さの発現メカニズムやその劣化メカニズムにはいまだ不明な点が多々あり、それらを今後解明していくためには、木材接着の形態を観察する技術が欠かせない。木材接着の形態を観察するための技術として、走査型電子顕微鏡や走査型レーザー顕微鏡による観察があるが、これらは試料表面を観察することしかできないため、本研究では代表的な透視観察技術の一つであるX線CTを用いて、木質材料の内部を非破壊的に観察する手法の確立を試みた。 当該年度は、木質材料に引張り力を加えながらX線CT装置に供するための汎用的な仕組みを開発した。具体的には、木質材料を引っ張りながらX線CT装置でスキャンできるような低廉な装置(治具)を開発し、それを用いて当該木質材料を引張りながら三次元透視観察できることを実証した。また、懸念される引張り中の応力緩和についても、市販のひずみゲージを活用してスキャン前後に当該木質材料引張り応力を測定できるように装置の改良を施すことができた。この手法は、さまざまな木質材料のいろいろな環境下での破壊過程、劣化過程の可視化やメカニズム解明に有用であると考えられ、この開発された手法により、次年度は実際にさまざまな木質材料のいろいろな環境下での破壊、劣化過程を可視化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた「同一の木質材料試験体に対して徐々に荷重をかけながら内部構造の変化を断続的に撮影するためのオリジナル治具を開発し、木質材料試験片を少し加力した状態でX線CT断層像を取得し、次に加力を少し増大させた状態で再び断層像を取得し、これを繰り返すことで木質材料の破壊過程における木材組織および接着剤硬化物の形態変化を明らかにする。」ということのうち、オリジナル治具の開発は完了しており、当初想定してなかったひずみゲージによる木質材料の引張り応力のリアルタイム測定についても実現することができた。接着剤硬化物の形態変化を明らかにする可視化ついてはまだ完全には終了していないものの、それは次年度の最初のうちに完了できると考えているので、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の予定通り、木質材料試験片を少し加力した状態でX線CT断層像を取得し、次に加力を少し増大させた状態で再び断層像を取得し、これを繰り返すことで木質材料の破壊過程における木材組織および接着剤硬化物の形態変化を明らかにする。その際、とくに木質材料の促進劣化過程と自然劣化過程における形態観察結果に違いがあるのかどうかを明らかにすることに注力する予定である。次年度が最終年度となるため、より計画的に研究を実施していきたい。
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