研究課題
バイオ炭による炭素貯留効果を算出する算定式がIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)の改良報告書に記載されるとともに、J-クレジット制度においても「バイオ炭の農地施用」に関する方法論が策定されている。現在、我が国においては、炭素貯留量を算出するパラメータに施用するバイオ炭のデフォルト値を用いているが、伝統的に炭質の評価をJIS M 8812に従って測定した工業分析値を用いてきた経緯から、公定法であるJIS法で得られた測定結果を用いて国際基準に適合した炭素貯留量を見積る換算手法を検討した。最終年度は、地域未利用バイオマスとしてリンゴ剪定枝とそば殻を原料に標準バイオ炭を異なる温度で調製した。得られたバイオ炭は、工業分析により、水分、灰分、揮発分、固定炭素を求めた。さらに、IPCCのパラメータとなるバイオ炭の有機炭素(Fc)を元素分析装置で得た全炭素から無機炭素を引いた値として求めた。100年後の炭素残存率(Fperm)は、最新の文献に従い世界の耕作地の年平均土壌温度を14.9℃とした場合の値を、元素分析により求めた水素とFcのモル比から算出した。リンゴ剪定枝炭(果樹剪定枝炭)とそば殻炭(草本由来炭)についても、工業分析で求めた揮発分と固定炭素の重量比(VM/FC)から炭化温度を推定する換算式を得た。また、これらバイオ炭の固定炭素測定値からも炭素貯留量を算出するための換算式を得た。研究期間全体を通して、工業分析値を用いた炭化温度の推定式と工業分析値(FC、あるいは、VM/FC)から炭素貯留量を見積るための換算式を得た。
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Journal of Soil and Water Conservation
巻: 77(3) ページ: 322-330
10.2489/jswc.2022.00083