研究課題/領域番号 |
20K06173
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋山 拓也 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (50553723)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 内樹皮 / 外樹皮 / リグニン / MWL / 抽出成分 / ニトロベンゼン酸化 / NMR |
研究実績の概要 |
本研究課題は針葉樹の内樹皮および外樹皮に含まれるリグニンの化学的特徴を木部リグニンとの比較により明らかにすることを目的としている。R3年度に、スギ樹種を対象に、リグニン骨格単位間の結合様式の構成比(β-O-4型等の非縮合型、β-5型、および5-5型ビフェニルの部分構造の構成比)について、樹皮と木部の差異をニトロベンゼン酸化法で比較した。その結果、非縮合型/β-5型/ビフェニル型生成物の量比(モル比)は、木部、内樹皮および外樹皮の試料間で差異が小さく約80:7:13 (差異、79.8±0.1: 6.7±0.3: 13.3±0.2) であり、樹皮と木部のリグニンの非縮合型/β-5/5-5構成比は似ていると示唆された。 今年度(R4年度)は、木部、内樹皮からBjorkmanリグニンを調製し、β-O-4、β-5、β-β、および5-5結合の各結合様式の詳しい存在形態について、NMR測定による両者の定性的な比較を行った。その結果、内樹皮Bjorkmanリグニンの1H,13C-二次元NMRスペクトルには、木部Bjorkmanリグニンと同様にβ-O-4、フェニルクマラン(β-5)、レジノール(β-β)、およびジベンゾジオキソシン(β-O-4/5-5)型の部分構造に帰属されるピークが観測され、両者のスペクトルには顕著な差異が見つからなかった(リグニンの側鎖領域)。また、芳香核領域(6.1-8.3/100-134 ppm, 1H/13C)についても、両者に顕著な違いは見つからなかった。R3年度の非縮合型/β-5/5-5構成比の結果と併せ、スギ内樹皮のリグニン量は木部に比べて顕著に低いものの、内樹皮リグニンの化学構造に関しては、木部のそれと似ていると強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スギ樹種に関して樹皮リグニンの各結合様式の存在形態を1H,13C-二次元NMR 法により詳しく示すことができた。一方で、その樹皮からのリグニン試料の単離に時間を費やしたため計画に軽微な遅れが生じている。スギ樹種の他に2種の針葉樹について分別と前抽出の分析前処理を完了しているが、それらの化学分析について完了していないため、やや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
計画の路線に変更は加えず、スギ樹種と同様の化学分解法で他の針葉樹種について分析し、樹種間における樹皮リグニンの非縮合型/β-5/5-5構成比の差異を調べる。これにより、これまで得られたスギ樹種についての結果が樹種特有なものなのか否か判断できる予定である。 また進捗の状況に応じて、リグニン以外にも、セルロースやヘミセルロース等の成分について成分分析を行い、樹皮と木部の化学成分についての総合的な比較を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)R4年度に計画していた化学分析の一部をR5年度に実施する予定のため。 (使用計画)リグニン化学分析に必要となる試薬やガラス器具の購入、およびR4年度に予定していた旅費、謝金に使用する計画である。
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