研究課題/領域番号 |
20K06174
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
松永 正弘 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353860)
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研究分担者 |
小林 正彦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00397530)
神林 徹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (30772024)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 加圧熱水 / 減圧注入 / 寸法安定性 / バルキング / 質量増加率 |
研究実績の概要 |
今年度は様々な生成条件で木材を加圧熱水処理して得られた反応液を他の木材に減圧注入し、乾燥して成分を硬化させ、製造された反応液注入木材の寸法安定性を評価した。加圧熱水処理反応液の生成は、原料として粒径が178μm以下のスギ木粉を用いた。純水を加えてスラリー状にし、反応容器へ注入して加圧熱水処理を行った。処理条件は、スラリー濃度が1~10wt%、温度が180~240℃、圧力が2~10MPa、時間が5~60分とし、窒素または二酸化炭素の雰囲気下で行った。そして、得られた反応液は20~25w/v%に濃縮した後、寸法が5mm (L) × 20mm (R) × 20mm (T) のスギ辺材試片へ減圧注入を行った。注入後、送風乾燥器で95℃/2時間、続いて180℃/3時間の条件で乾燥させて注入成分を乾固させた。注入試片を流水中で一昼夜水洗してから再度乾燥させ、全乾質量と寸法を測定して、注入処理による質量増加率と堆積膨潤率(バルキング)を測定した。そして、試片中に純水を8時間減圧注入した後に寸法を測定し、寸法安定性の指標となる抗膨潤能(ASE)を算出した。 各種処理条件で加圧熱水処理を行った結果、スラリー濃度が10wt%で処理温度が220℃、処理圧力が10MPa、処理時間が30分で、二酸化炭素の雰囲気下で加圧熱水処理した反応液をスギ辺材に注入した時に、最も高いASE(47.1%)が得られた。質量増加率やバルキングも今年度行った処理条件の中で最も高い値を示し、注入成分が材内に留まって細胞壁を膨潤させていることが示唆された。また、加圧熱水反応液の水溶性成分について、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて分析した結果、高いASEが得られた反応液中では5-ヒドロキシメチルフルフラール (5-HMF)の割合が高い傾向にあることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、木材由来成分のみを用いて木材を改質し、高い寸法安定性を有する木材を製造すると共に、その性能の発現機構を解明することを目的としている。今年度は加圧熱水処理反応液の生成条件の検討を行い、申請時に提出した当初の研究計画に沿った内容でほぼ予定通りに進行した。また、来年度以降も計画通りに研究を遂行できる見通しであることから、(2)の区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き加圧熱水処理反応液の生成条件の検討や反応液の注入処理条件の検討を行い、反応液注入木材のASEを測定する。そして、寸法安定性の向上に最も適した処理条件を特定する。また、寸法安定性の向上に最適化された処理方法で製造された反応液注入木材について分析を行い、注入処理による寸法安定性の発現機構を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)消耗品を定価で購入する計画を立てて予算の執行を行ったところ、納入価格との差額が生じ、結果として次年度使用額が生じた。また、当初予定よりオンラインによる学会発表やシンポジウム参加が増加し、旅費の使用額が減少した。
(使用計画) 加圧熱水反応液の成分分析を行う際に必要なHPLC関連の消耗品、HPLC分析に必要な超純水を製造する装置のフィルター等消耗品、加圧熱水処理装置のメンテナンス費用、得られた成果の学会発表や暴露試験地で耐久性評価を行うために必要な旅費、実験補助員の賃金などに使用する計画である。
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