研究課題/領域番号 |
20K06180
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松田 裕之 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (70190478)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイワシ / 生物学的許容漁獲量 / 漁獲可能量 / 漁獲圧 / 漁獲量制御規則 |
研究実績の概要 |
レジームシフトなどの長期的な資源変動に対応するために、生物学的許容漁獲量(ABC)決定規則に基づいて漁獲可能量(TAC)を定める現行の資源管理に加えて、TAC管理とともに漁獲圧(漁獲係数F)の上限を併用した漁業管理戦略を提案した。実際のマイワシ太平洋系群の1970年代からの加入率の変動(水研機構による推定値)を用いて、実際の過去の漁獲量に基づく資源動態、現行のTAC管理を過去に遡って実施した場合の資源動態、TACと漁獲圧規制を併用した漁業管理を実施した場合の資源動態を比較した。1976年からこの管理を実施した場合、1991年から実施した倍、2005年から実施した場合の3つの場合を考えた。その結果、現行のTAC管理は過去の資源動態よりも漁獲量、資源量ともに向上させることができたが、我々が提案したTACと漁獲圧規制を併用した漁業管理のほうが、特に2005年から始めた場合に漁獲量資源量ともにさらに向上させることができることが分かった。このことから、レジームシフトなどの長期変動を考慮した場合には、TACによる出口管理だけでなく、漁獲圧規制を併用した管理戦略が優れていることが示唆された。 この解析には、実際の資源管理と同様に前年(T-1)の資源評価に基づいて翌年(t+1)のTACを決めるという手順を考慮し、推定誤差と加入率の過程誤差と漁獲係数Fの実行誤差を考慮している。誤差が大きいほど、提案する管理規則が良い性能を持つことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたレジームごとに別の管理規則を提案することは、実際の管理モデルを計算してみた結果、もともと2年前の資源評価に基づいてTACを定めること、レジームが移行したことが判明するまでに2年程度以上かかることから、非現実的と考えられた。しかし、TAC規制と漁獲圧規制を併用することで、効率的な管理が実現できることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
レジームシフトを考慮した資源管理規則の提案は、水産資源管理における最重要課題の一つであり、この問題に具体的な提案ができたことで、他の魚種への応用、より精緻な情報を用いた政策への反映への道が開けたといえるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において野外の調査研究が不可能になったため。 投稿中の査読論文が受理されたのち、次の論文の研究打ち合わせ旅費(著者が卒業し名古屋在住のため)、投稿、掲載の費用に充てる
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