研究課題/領域番号 |
20K06184
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高木 基裕 愛媛大学, 南予水産研究センター, 教授 (70335892)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ドロアワモチ / 絶滅危惧貝類 / 保全 / 生態 |
研究実績の概要 |
腹足綱収眼目アワモチ科貝類のドロアワモチは内湾の干潟の一部に生息し、干潮時には干潟を匍匐、表面のデトリタス等を摂食し、満潮時には砂泥中に潜り込むとされる。本種は環境省または各自治体のレッドデータブック等に絶滅危惧種として記載されている。絶滅危惧種の保全において、保全対象種についての生息環境および生態の把握が重要である。本年度は、ドロアワモチ生息地における生態調査を行い、ドロアワモチの生態および生息適地の環境条件について明らかにすることを目的とした。 2020年の4月から12月にかけて、御荘湾においてドロアワモチの生息が確認された10地点のうち、6地点(St1,St.2,St.5,St.8~St.10)について個体数と体サイズの調査を行った。個体数は大潮期の日中の干潟干出時において毎時間計数し、全長・体幅および体重は、毎月干潮時に測定した。 ドロアワモチは、2020年の4月21日から11月16日に生息が確認され、12月1日以降は確認されなかった。気温は観察開始日の4月21日には17.6℃~22.3℃を示し、8月5日に30.3℃~36.3℃と最も高くなったのち降下し、個体が確認されなくなった12月16日は17.0℃~20.5℃だった。御荘湾の湾奥のSt.1とSt.2では、干潟の干出開始後1時間~2時間の間に個体数が最多となる傾向がみられ、その他の湾央の生息地では、最干潮時の前後1~2時間に個体数が最多となる傾向がみられ、これらの時間帯において摂餌行動が確認された。各調査地点の体重の平均は調査地点により異なり、湾奥(2.5g,3.3g)で小さく、湾央(5.7g~6.4g)で大きかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
御荘湾での生息地の塩分濃度や水温などの環境測定を行い、ドロアワモチの干満時や季節による個体数や体サイズの変化について把握し、あわせて生息地の評価を行った。干潟が干出して1~3時間の間に最も個体数が多くなる傾向がみられた。また、ドロアワモチは2020年3月から同年の11月にかけて出現し、その盛期は6月から10月であり、最低気温が3~8℃くらいに活動の開始と終止の境があると考えられた。また、夜間の干潮時にも活動を行う一方、雨天で活動する個体はわずかであった。調査期間中に見られたドロアワモチの体重の平均は調査地点により異なり、湾奥で小さく(2.51~3.25g)、湾央で大きい(5.73~6.39g)傾向にあった。また、9、10月に新規個体が干潟に加入していることが判明した。個体数密度は調査地点の面積や生息環境の影響を受け異なり(0.40~2.20)、安定した生息に適した地点はわずかであった。 本年度の調査によりドロアワモチ保全のための基礎的生態が明らかとなり、本研究課題の現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
御荘湾に生息するドロアワモチ類について生態観察や飼育観察を行い、伸長時, 収縮時など活動状態の違いによりドロアワモチ型⇔ジャコテンアワモチ型の体型や体表面の変化がみられるのか行動の追跡を行い、2型の同質性(異質性)を明らかにするとともに、ヤベガワモチも含め形態学的・遺伝学的解析を行い、種の確定にむけた作業を行う。 同所的に生息するドロアワモチとジャコテンアワモチ型の個体の行動を追跡し、干潮時の摂餌場への出現の仕方や移動、静止時と活動時の体型や体表面の形状などを観察し、ドロアワモチ型⇔ジャコテンアワモチ型の体型の変化がみられるのか判定するとともに繁殖行動や他の生物種との関係等についても明らかにする。 ドロアワモチ類は匍匐速度が1m/時程度と小さいと考えられるため、行動観察が容易であるが、これには肉眼の他、ビデオカメラ数台を配置して記録し、行動解析ソフトにより解析を行う。 飼育については、ドロアワモチの満潮時や冬眠時の行動など野外観察では難しい行動を補完して観察する。また、人工繁殖に向けた飼育法の確立も行う。
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