研究課題/領域番号 |
20K06186
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
久米 元 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (00554263)
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研究分担者 |
一宮 睦雄 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (30601918)
小針 統 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (60336328)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 北部薩南海域 / マアジ / マサバ / 湧昇 / 食性 / 成長 / 魚種交代 |
研究実績の概要 |
冬季から春季に北部薩南海域で2015年以降継続実施している小型浮魚類の仔魚を対象とした調査から、2016年まではマアジが優占していたのに対して、2017年以降、サバ属が圧倒的に優占していることが分かった。マアジ、サバ属ともに、湧昇現象のみられる鹿児島湾の湾口部で特に出現数は多かった。これまで本海域は ゴマサバの主要な産卵場であることが知られていたが、制限酵素断片長多型法により仔魚を種査定した結果、マサバ仔魚が圧倒的に優占して出現していることが分かった。今回得られた成果は、本海域において魚種交替、すなわち近年みとめられているマサバの資源量増加の兆候をとらえたものと考えられる。これまで北部薩南海域は資源高水準期にマイワシの主産卵場となることが知られていたが、マサバでも同様の現象がみられることが明らかとなった。 冬季に本海域において優占して出現する魚類7種(マアジ、マサバ、カタクチイワシ、カサゴ属の複数種、ホウボウ科の複数種、ヨコエソ、アラハダカ)の仔魚を対象とし、消化管内容物の検鏡、DNAメタバーコーディング解析、炭素・窒素安定同位体比分析の3手法を用いて食性解析を実施した。その結果、マアジ、カタクチイワシ、ホウボウ科の複数種ではカイアシ類、マサバ、カサゴ属の複数種、中深層性種であるヨコエソとアラハダカではカイアシ類に加え、高い割合で尾虫類を摂餌していることが明らかとなった。本海域の低次食物網において、尾虫類を介した微生物食物網が重要な役割を果たしており、種間で餌生物に対する競合を緩和し、多くの種の共存を可能にしている可能性が示唆された。 マアジとマサバの成長解析を行い、鹿児島湾口部と湾外とで比較した結果、成長に違いはみられなかった。2種の仔魚にとって、湾口部から湾外にかけての広範囲の海域が好適な成育場としての機能を果たしていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北部薩南海域において優占して出現するマアジとマサバの仔魚の出現様式、成長および食性について明らかにすることができた。得られた複数の成果については国内および国際学会で発表し、また国内および国際誌に受理されている。よって、本研究課題の進捗状況について、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して、北部薩南海域における小型浮魚類の仔魚の出現状況、食性および成長解析を進める。そして、3年間で得られる成果について総括する。
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