研究課題/領域番号 |
20K06191
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
武島 弘彦 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 客員研究員 (50573086)
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研究分担者 |
安房田 智司 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60569002)
橋口 康之 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (70436517)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 絶滅危惧種 / 集団ゲノミクス / 魚類 / リュウキュウアユ / アユ / 存続 |
研究実績の概要 |
絶滅危惧の生物では,近親交配に伴う遺伝的多様性の低下が,絶滅リスクを高めると予想されるが,一部の絶滅危惧種は長期間存続してきた.本研究では,アユの亜種リュウキュウアユを絶滅危惧魚類のモデルとして,(1)高深度で個体レベル,ならびに低深度で集団レベルのゲノム情報を解読する.(2)得られた個体/集団のゲノム・データについて,集団サイズの大きい日本のアユ集団と比較解析することから,魚類では殆ど進んでいない,絶滅危惧集団の存続に不可欠な遺伝的特性を解明することを目的としている.
第3年度である本年度は,(1)の低深度の集団レベルのゲノム情報取得に関して,確立した低価格次世代シーケンス・ライブラリ作成方法を適用し,奄美西部のリュウキュウアユ,ならびに琵琶湖アユ,各々48個体(計96個体)について低深度のゲノム情報を得た. (2)に関しては,4つの地域集団,リュウキュウアユの奄美東部ならびに奄美西部,日本本土のアユと琵琶湖アユから,これまでに得られた低深度データに基づき,比較集団ゲノミクス解析を行った.アユの2集団と比較して,リュウキュウアユの2集団では,共通してゲノム全体で変異が乏しいものの,遺伝子コード領域においては非同義置換が,同義置換の数を上回っていた.各集団の塩基多様度やTajima's D 等をゲノムワイドに算出し,リュウキュウアユ集団に特徴的な変異のパターンを検討した.リュウキュウアユの2集団に共通して塩基多様度が高いゲノム領域には「生体防御」に関連する遺伝子が含まれていた.Tajima's D を基準として「平衡選択」の影響下にあるとみられるゲノム領域を探索したところ,リュウキュウアユの2集団では「mRNAの品質管理機構」の生体経路に関わる遺伝子を含むゲノム領域で,平衡選択のシグナルが共通して検出された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大により生じた,初年度の計画の遅れを挽回するべくデータ取得と解析を進めた. 予定していた4集団の低深度データを取得し,データに基づく集団ゲノミクス解析を実施できる状況が整たったものの,データ解析については一部を次年度に繰り越すこととなった.
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今後の研究の推進方策 |
予定していた4地域集団のデータを取得を達成できたので,ここまでのデータ解析から見いだされた,絶滅危惧集団に特徴的な遺伝的特性について,さらに検討を進めると共に,未着手のデータ解析手法の適用を進めて行く.加えて,研究成果のとりまとめを進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の新型コロナウィルスの感染拡大や,第3年度の予期せぬ異動により生じた,実験計画の遅れを挽回するべく研究を進めたものの,データ解析ならびに研究成果のとりまとめを次年度に繰り越すこととなったため. 第2年度と第3年度に予定していたデータ解析と成果のとりまとめを速やかに実施し,これまでの遅れを取り戻す.
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