ウミネコは極東地域で繁殖する沿岸性の昼行性表層漁業カモメである。これまでの研究では、ウミネコはカタクチイワシ、マイワシなどの表泳性の浮魚類やオキアミ類を好んで捕食するとされてきた。しかし、本研究では、ウミネコが深海に生息する中深層性マイクロネクトンを継続的に捕食していることを初めて明らかにした。青森県鯛島と弁天島、岩手県の二才島で調査を実施し、ウミネコの胃内容物や血液を採取するとともに、その行動をGPSロガーで追跡した。本研究では、従来の胃内容分析およびDNA分析を行うとともに、安定同位体比分析を用いることで、多面的かつ定量的な食性解析を行った。本調査において、全ての島における主要な餌は、マイワシSardinops melanostictusおよびカタクチイワシEngraulis japonicusであったが、3つの島の内、青森県の弁天島と岩手県の二才島からのみ、継続的には中深層性マイクロネクトンであるハダカイワシ類であるセッキハダカStenobrachius nannochir、ヒカリエソArctozenus risso、シンカイエビBentheogennemα borealis、ニセテカギイカEogonatus tinroが、継続的に出現した。これらは、夜間から明け方にかけて採餌されていた。しかしながら、多くの場合これらの出現率は低く、その寄与は総じて大きくなかった。 GPSの軌跡から、中深層性マイクロネクトンの利用が見られた、2つの島では、共通して、夜間のトリップが多く、水深800-3000mの外洋域でも採餌が見られた。これらの行動は、本種の中深層性マイクロネクトンの利用と密接に関係している可能性がある。 2014年以降の海洋のレジームシフトとこれらの利用の間には関係性は無く、特定の繁殖地においては、ほぼ毎年夜間に繰り返し利用されている餌であることが明らかとなった。
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