研究課題/領域番号 |
20K06197
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
芦田 拡士 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(清水), 主任研究員 (00603862)
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研究分担者 |
安藤 靖浩 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (30261340)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 繁殖投資量 / 脂質 / 脂肪酸 / マグロ / 産卵数 |
研究実績の概要 |
クロマグロは1産卵期に1個体が複数回産卵する多回性産卵魚である。そのような魚種では1回あたりの産卵数は個体の内的・外的要因によって変動することが知られている。本申請課題では、産卵数と卵内の脂質・脂肪酸量を用いて、卵の数・質的要素を考慮したクロマグロの繁殖投資量を推定する。繁殖投資量や卵の脂質・脂肪酸量が水温・尾叉長・肥満度などの内的・外的要因の変化に対し、どのような応答を示すかを明らかにする。更に、明らかになっている3つの産卵場(即ち南西諸島、日本海、常磐・三陸沖)の親魚から繁殖投資量を推定・比較することで、産卵場としての重要度を明らかにする。 今年度のサンプリングで入手したクロマグロの卵巣の組織切片観察から、計38個体の吸水卵を持つ卵巣を入手した (日本海:13個体, 常磐・三陸沖:19個体, 南西諸島:3個体)。2016, 2019年に南西諸島・日本海においてサンプリングした吸水卵を持つ卵巣 (計16個体) を用いて、個体の1回あたりの産卵数を推定した。一般化線形モデルによる解析から、表面水温と体サイズは日本海のクロマグロの1回あたりの産卵数に対して正の影響を与えることを明らかにした。 吸水卵の脂質・脂肪酸分析に必要な試料量およびサンプリング方法を開発し、日本海で漁獲された27個体の吸水卵の脂質・脂肪酸を測定した。卵1個当たりの総脂肪酸量は卵1個の乾燥重量と正の相関が、卵径とは負の相関が認められた。また仔魚の発達に重要とされているDHAやEPAの吸水卵中の含有率は卵径や産卵数とは明瞭な傾向は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の一部内容を含む研究成果が投稿論文として投稿され受理、印刷された。また、吸水卵の脂質・脂肪酸分析についても、分析に必要な試料の諸条件を明らかにすることができ、分析が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、日本海に加えて南西諸島や常磐・三陸沖で採集された吸水卵の脂質・脂肪酸分析を行う。同一個体の1回あたりの産卵数と脂質・脂肪酸量を用いて繁殖投資量を推定する。推定された3つの海域の個体の繁殖投資量を比較し、各産卵場の繁殖投資量を比較する。吸水卵中の脂質・脂肪酸量や繁殖投資量の変動に及ぼす要因について、予備的解析を行う。今年度の解析結果で、日本海の見られた卵径と総脂肪酸量・脂質量の関係が他の海域でも見られるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、直接の研究打合せが出来なかったこと、物品費で購入した顕微鏡カメラシステムが想定より安く購入することができたため、今年度の使用予定額に変更が生じた。変更が生じた金額は、翌年度の物品費および1回あたりの産卵数分析の外注分析費に充てる予定である。
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