2022年度も引き続き吸水卵を卵巣内に持つ個体を収集するために、各海域の漁獲物からサンプリングを継続し、計8個体の吸水卵を持つ個体を得た。このうち、脂質・脂肪酸分析の予定がある4個体について、1回あたりの産卵数を推定した。これまでに推定した1回あたりの産卵数のデータから、常磐・三陸沖では1回あたりの産卵数と尾叉長・水温に正の相関がある事を明らかにした。 吸水卵の脂肪酸分析は、過去に産卵数を推定した個体を含め計27個体分について実施した。これまでに収集した吸水卵1個あたりの総脂肪酸量のデータと今年度の分析データを併せて解析を行った。南西諸島で漁獲された個体の吸水卵1個あたりの総脂肪酸量は、他の産卵場の個体より有意に高いことが明らかになった。また、吸水卵1個あたりの総脂肪酸量は、吸水卵1個あたりの乾燥重量および肥満度の影響を受けることが明らかになった。更に、吸水卵以前の発達段階の卵母細胞を持つ個体の卵を分析することで、卵内の総脂肪量の海域間差異が卵黄形成初期から生じている事を明らかにした。吸水卵の総脂肪酸量の動態に関する一部成果を学会において発表した。 これまでに1回あたりの産卵数と吸水卵1個あたりの総脂肪酸量の両方を明らかにした72個体を用いて1回の産卵における繁殖投資量を新たに推定し、今年度までに計85個体の繁殖投資量を推定した。個体の平均繁殖投資量は南西諸島が最も大きく、次いで常磐・三陸沖、日本海の順となった。また、個体の繁殖投資量は体サイズ、表面水温と正の相関が認められた。 これまでに得られた結果から、南西諸島で産卵するクロマグロの繁殖投資量が最も大きい事が明らかになった。更に、繁殖投資量は産卵数と卵の質的要素の両方によって変化する可能性が示唆され、それぞれの要素は、外的・内的要因の影響を受けることが明らかになった。
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