岩手県大槌町の小鎚川と釜石市の鵜住居川におけるサケ野生魚の産卵床形成にかかる環境選択特性を明らかにした。地下水の湧昇が少ない鵜住居川では、サケの産卵期間にあたる10月-1月の下流部の水温は1.0~14.0℃であるのに対し、湧水の影響を強く受ける小鎚川では4.6~15.8℃と有意に高かった。両河川におけるサケの産卵床の分布は、鵜住居川では湧水付近に集中するのに対し、小鎚川では湧水付近を避けていることが明らかになった。このことは、サケの産卵場所選択において、低水温下では適切な水温を得るために湧水付近が選択されるのに対し、水温に問題のない環境では湧水による貧酸素条件が忌避されるためと考えられた。
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