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2021 年度 実施状況報告書

気候変動にともなう水循環の変化が日本海側沿岸域の低次生物生産に与える影響

研究課題

研究課題/領域番号 20K06206
研究機関京都大学

研究代表者

鈴木 啓太  京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (80722024)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード植物プランクトン / 動物プランクトン / 栄養塩 / 雪 / 雨 / 冬
研究実績の概要

1.科研費採択前の2016(平成28)年度と2018(平成30)年度に実施した観測について,新たに植物プランクトンと動物プランクトンの種組成と密度を分析した結果,以下2点が明らかになった.1-1.多雪の2017年1~3月には珪藻(Skeletonema属など)が大増殖し,カイアシ類(Acartia属とOithona属など)も増加したが,少雪の2019年1~3月には植物プランクトンも動物プランクトンもほとんど増殖・増加しなかった.1-2.降雪・降雨後に川を介して海に供給される栄養塩(特に硝酸)が植物プランクトンと動物プランクトンの増殖・増加を支えるボトムアップ型と考えられた.

2.科研費採択後1年目の2020(令和2)年度に実施した観測について,新たに水分子の水素・酸素安定同位体比と硝酸分子の窒素・酸素安定同位体比を測定した結果,以下2点が明らかになった.ただし,観測期間(2020年12月~2021年3月)の前半には降雪が多かったものの,後半には降雨が多く,観測期間を通し植物プランクトンの大増殖は見られなかった.2-1.降水に含まれる水と硝酸は,河川水と海面水に含まれる水と硝酸にほとんど寄与していなかった.2-2.河川水に含まれる硝酸は主に土壌と下水に由来し,海面水に含まれる硝酸は主に土壌に由来していると考えられた.

3.科研費採択後2年目の2021(令和3)年度も前年同様の観測を実施した(2021年12月~2022年3月).今回は観測開始を早めることにより,特に植物プランクトンの大増殖以前の状況を詳しく観測した.その結果,12月としては観測史上最大の積雪に遭遇し,1月に植物プランクトンの大増殖を確認することができた.今回得られたデータとサンプルを分析することにより,植物プランクトンの大増殖を引き起こす環境条件を特定し,メカニズムを解明することができると考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

科研費採択前も含め4季にわたり,それぞれ異なる気象条件のもとで集中観測を実施することができた.また,科研費採択後には,山地から沿岸までの多地点における採水,沿岸における植物プランクトンと動物プランクトンの採集,マガキの成長実験など,多岐にわたる観測・実験を当初の計画通りに実施することができた.特に,科研費採択後2年目の2021(令和3)年度は記録的な大雪に遭遇し、その影響を追究するに十分なデータとサンプルを得ることができた.
栄養塩濃度については,これまでに得られた全てのサンプルの測定を完了した.一方,水分子の水素・酸素安定同位体比については専門業者に測定を依頼し,硝酸分子の窒素・酸素安定同位体比については京都大学生態学研究センターとの共同研究により測定を行い,2020(令和2)年度に得られたサンプルは概ね測定を完了した.今後は,2021(令和3)年度に得られたサンプルの安定同位体比を測定しながら,植物プランクトンと動物プランクトンの種組成と密度を顕微鏡観察により分析してゆく予定である.なお,2021年11月に国際誌に投稿した論文は,2022年1月に却下の判断が下されてしまった.現在,別の国際誌に再投稿するべく,データを追加し,改訂を進めているところである.

今後の研究の推進方策

異なる気象条件のもと4季にわたり集中観測を行った結果,本研究の目的を達成するに十分なデータとサンプルを得られたと確信している.今後は,これまでに得られた大量のデータとサンプルの分析を着実に進めながら,必要に応じ,観測を補足的に実施する.また,最近却下された論文の修正作業に取り組みながら,他の研究成果も整理し,学会発表と論文出版につなげてゆきたい.

次年度使用額が生じた理由

水分子の水素・酸素安定同位体比の測定を外注するにあたり,サンプル1点あたりの測定費用を抑えるため,次年度に多数のサンプルをまとめて測定することにした.

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公開日: 2022-12-28  

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