研究実績の概要 |
昨年度までに岩手県内のサケマス孵化場のシロサケ(Oncorhynchus keta)の稚魚から分離培養した29株の冷水病菌(Flavobacterium psychrophilum)について、7つの遺伝子座位の塩基配列を決定し多様性を解析した。その結果、29株はグループ1から3の3つのグループに分けることができた。グループ1は、atpB 4型, dnaK 6型, fumC 5型, gyrB 7型, murG 6型, trpB 4型, tuf 8型;グループ2は、atpB 4型, dnaK 4型, fumC 2型, gyrB 37型, murG 25型, trpB 新型, tuf 18型;グループ3は、atpB 新型, dnaK 8型, fumC 7型, gyrB 19型, murG 25型, trpB 11型, tuf 9型の遺伝子型を示した。シロサケ稚魚から分離培養された冷水病菌の遺伝子型は、3グループとも、Flavobacterium psychrophilum typing databaseには登録のない遺伝子型であった。今後、これらの株についてゲノム解析を行い、ゲノムの比較を進めていく予定である。 昨年度開発したgyrB遺伝子を標的とする冷水病菌特異的検出プライマーを用いて、サケマス孵化場の稚魚飼育水槽の沈殿物中の冷水病菌の検出試験を実施した。サケマス孵化場では飼育環境の維持のために残餌や糞の掃除を毎日少なくとも二回行っているので、掃除前に水槽から採取した残餌や糞を含む沈殿物から調製した環境DNAを鋳型として、冷水病菌の特異的検出PCRを行ったところ、斃死個体が頻出した水槽由来の水槽内沈殿物DNAのみから冷水病菌が検出された。今後は冷水病菌の分離培養と環境DNAの解析の両面からシロサケ稚魚飼育環境における冷水病菌の生態についても解析する予定である。
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