研究課題/領域番号 |
20K06214
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
高見 宗広 東海大学, 海洋学部, 講師 (70835933)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中深層 / 漸深層 / 仔稚魚 / 閉鎖器 / 層別採集 |
研究実績の概要 |
22年度の採集調査は各月2回計24回実施する計画の中で,海況不良もあり13回に限られたが,本年度から2層同時曳網に着手したことにより,計24曳網(サンプル)と昨年度(7曳網)に比べ大幅に採集量を増加することができた.24曳網のうち4曳網(すべて下層のネット)は,ネットを閉鎖する2段目が作動不良を起こし層別採集とはならなかったが,ワイヤーアウトを1000 mとし,船速約1.7-2.0 ktで15分航走をおよそ12回繰り返す方法により,上層のネットで約500-700 m層,下層のネットで約800-1000 m層の曳網を可能にした. 採集された魚類は,上層のネットで16科24種あるいはタイプ,下層のネットで9科15種あるいはタイプ(層別採集ができなかった調査を除く)であった.上層のネットでは,1亜目7科(ホラアナゴ科,ソコイワシ科,ハナメイワシ科,セキトリイワシ科,ハダカイワシ科,ソコダラ科,カブトウオ科,チョウチンアンコウ亜目)の仔稚魚が50個体採集されたが,下層からは4科(ソコイワシ科,ホウライエソ科,ソコダラ科,ゲンゲ科)の4個体しか仔稚魚が採集されなかった.これらのうち,ハナメイワシ科,セキトリイワシ科,ソコダラ科は仔魚期が採集されたが,その他はすべて稚魚期のみで仔魚期は採集されなかった.これらの中で仔稚魚期(5個体)から成魚期(4個体)までが得られたセキトリイワシ科のノコバイワシについては,その形態発育を詳細に観察した.ノコバイワシの仔稚魚は背・臀鰭基底と尾柄部腹縁に乳頭状突起がある,肩帯部に2個の暗色の点状黒色素胞を有するなどの特徴を有することを明らかにした.また,背・臀鰭基底の乳頭状突起は成魚期まで残存し,ヒレナガイワシ属Binghamichys亜属に共通する特徴であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
22年度からコロナ禍を原因としたフィールド調査の実施における影響は少なくなり,採集努力量を大幅に増やせ,ハナメイワシ科,セキトリイワシ科およびソコダラ科などの仔魚が採集されてきた.しかし,本研究の開始年度から問題となっているコロナ禍の影響や海況不良による遅延を取り戻すには至っていない.また,対象とした仔稚魚が採集され始めているものの,幅広い発育段階が採集され形態発育を明らかにできたのはセキトリイワシ科のノコバイワシだけであり,他の種では未だ十分な量が採集されているとは言えない.
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今後の研究の推進方策 |
中漸深層における層別採集調査は確立されてきたものの,中漸深層における仔稚魚の生息密度が低いことも相まって,コロナ禍を主な原因とする過去2年間の研究の遅延を取り戻すには至らず,5つの主目的のうち2020-2023年度で終了する予定であった「中漸深層の仔稚魚相の把握」および「知見の乏しい仔稚魚の形態発育の解明」を進めている状況である.また,2023年度の1年間は,海外出張中のため本研究を進めることができず,最終年度である2024年度中に残りの主目的である「食性,成長,産卵数を含めた初期生活史の解明」,「分布水深,形態,食性,産卵数の関係性から生存戦略の一般則を見出す」および「中漸深層における仔稚魚の成育場としての機能の解明」を達成するのは困難である.従って,最終年度は,「中漸深層の仔稚魚相の把握」および「知見の乏しい仔稚魚の形態発育の解明」に注力し,その充実を図る.2022年度の調査では,800-1000 m層には仔稚魚が少なく,500-700 m層から多くの仔稚魚が得られたことから,2024年度は500-700m層を中心に調査を実施する.また,3層同時採集にも着手し,より採集努力量を高めるとともに,詳細な水深ごとの仔稚魚相の把握を進める.加えて,種数は限られると思われるが,ノコバイワシなどの形態発育を明らかにできた種の食性,成長,産卵数の把握も進め,可能な限り初期生活史の解明をすすめることで,各種ごとの生存戦略の一端を見出す.
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次年度使用額が生じた理由 |
「理由」コロナ禍によりこれまで調査回数が限られていたため,ロープやネットなどの調査機材の消耗が抑えられ,サンプル瓶や保存溶液などの消耗品も予定より使用が抑えられていたため. 「使用計画」3層同時曳網を実施するための追加の採集機材の購入に使用とともに,調査回数の増加に伴う調査機材の損耗や,サンプル瓶や保存液の消耗の増加に応じて使用する.
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