研究課題/領域番号 |
20K06215
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
河村 耕史 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (00595613)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 藻類バイオ燃料 / Botryococcus / 遺伝資源 / 突然変異育種 / トランスポゾン |
研究実績の概要 |
微細藻類は光合成によって二酸化炭素と水から脂質、水素など、エネルギーに変換可能な物質を作ることができる。そのため、微細藻類からカーボンニュートラルで再生可能なエネルギーを作るための「藻類バイオ燃料」の研究が進められてきた。バイオ燃料化が期待される微細藻類の中でも、Botryococcus braunii は重油相当の炭化水素を蓄積する特質から注目されており、「石油を作る微細藻類」と呼ばれ、注目されてきた。しかしながら、増殖が遅い欠点があり実用化のめどはたっていない。 本研究は、(1)野生の遺伝資源の可能性に着目し、特にまだ調査が進んでいない熱帯の野生株を採取し、既存株よりも増殖性に優れた新しい株の存在可能性を検証する。(2)同時に、現在、世界最速の増殖速度を持つShowa株を育種材料とし、イオンビーム照射とトランスポゾンによる突然変異誘導技術を開発し、増殖性能が向上した変異株の取得をめざす。 課題(1)について、本年度はインドネシアの研究協力者と共同で熱帯産野生株の収集とスクリーニングを行った。スクリーニングではShowa株をベンチマークにそれよりも増殖性の高い野生株を選抜し、Showa株の持つ最速記録(倍加時間1.4日)の更新を目指した。国内外で採取した野生株200株余りを対象にスクリーニングした結果、Showa株よりも増殖速度の速い野生株を複数特定した。そのうちの1株は倍加時間1.2日とこれまでの世界最速記録を更新した。課題(2)について、本年度は内在性トランスポゾンの転移活性を検証するため、次世代シーケンサーを使ったトランスポゾンの挿入位置変異の検出法を開発した。これにより、トランスポゾンが転移した場合に、新しい挿入箇所を特定し、転移を活性化するための培養条件などの特定が容易になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者の協力もあり、予定どおり野生株の採取とスクリーニングを実施でき、増殖に優れた新たな野生株を発見できた。
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今後の研究の推進方策 |
野生株には炭化水素の構造が異なる品種が存在するが、それを形態だけで判断することは難しい。燃料特性に優れたB品種を迅速に特定する分子遺伝学的な手法を開発する。野生株のスクリーニングから得られた増殖の早い株を使い、高密度培養系を構築して、炭化水素の生産速度の世界記録更新を目指す。次世代シーケンサーによるトランスポゾンの挿入位置検出法を使い、トランスポゾンの転移活性の検証やそれを誘発する方法論の開発を進める。イオンビームを照射して突然変異育種するための方法論の開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が少額のため有効に使えないと判断し、次年度に使用することとした。
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