石油を作る微細藻類Botryococcus brauniiを材料に、突然変異育種法の開発と野外の新奇遺伝資源の調査を行なった。突然変異育種法の開発に関して、トランスポゾンを使った突然変異誘発法の開発を進めた。転写活性を有するトランスポゾンを4種特定したうえで、その挿入位置に関する塩基配列情報をNGSを使って網羅的に取得する手法を開発し、株間による挿入位置多型や各種ストレス処理による転移誘導効果の検証を行なった。その結果、解析した4種のトランスポゾンによって、株間の挿入位置の多型の大きさに顕著な違いがみられた。挿入位置の多型が多いトランスポゾンは、転移活性を有する可能性が高いといえる。そこで、このトランスポゾンをターゲットに、各種ストレス条件(栄養欠乏、塩性、暗条件、高温)が転移を誘導するかどうかを検証した。その結果、研究に使ったShowa株については、今回調べたストレス条件では顕著な転移活性の増加は認められなかったが、少数ではあるが、新たな挿入変異が発生したため、転移活性は保有しているものと考えられた。また、熱帯のインドネシアから亜熱帯の沖縄諸島、そして温帯の本州各地、合計200ヶ所余りのため池や湖沼で採水調査を行い、30ヶ所程度からB. brauniiの野生株を発見し、合計400株余りを単離した。単離した野生株について、増殖速度をもとに選抜した結果、これまでで最速の増殖速度をもつ新たな野生株を発見した。この株を使って高密度培養を行なったところ、バイオマス生産速度が500mg/L/day以上と、従来の数倍高い生産性を示すことがわかった。さらに、高水温条件下でのスクリーニングを行い、高温耐性株を複数単離した。通常株では、生産性を高めるために強い光を照射して高密度培養をするが、冷却装置を使わないと、水温が上昇して死滅しまう。高温耐性株であれば、そのまま培養できる。
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