研究実績の概要 |
海産性光合成細菌Rhodovulum sp. KKMI01はクルマエビの飼育水に1×10^3菌/ml(菌培養液の100万倍希釈)という極めて低濃度で添加することで、エビの成長を促進し、自然免疫系遺伝子を活性化することが判っている。 Rhodovulum sp. KKMI01が持つクルマエビの自然免疫を活性化する物質を細胞壁成分のlipopolysaccharide(LPS)と予想して以下の実験を行った。Rhodovulum sp. KKMI01からLPSを精製し、クルマエビ飼育水への投与試験を行った。LPSの投与濃度は、1pg/ml、100pg/ml 、10ng/mlの3条件として飼育水に直接添加した。クルマエビは体重約4gのものを熊本県牛深市のクルマエビ養殖場から入手して用い、各投与区3尾を用いて試験を行った。試験開始3日後、頭と尻尾を除いたクルマエビ全体からtotal RNAを分離した。分離したRNAを鋳型にcDNAを合成し、定量RT-PCRで以下の自然免疫に関わるタンパク質をコードする遺伝子の発現量を定量した。NADPH oxidase, Prophenoloxidase, Lysozyme, Caspase, Crustin-like peptide, C-type lectin3, Serin proteinase inhibitor, Toll-like receptor 2, Immune deficiency (IMD)。 その結果、NADPH oxidase, Prophenoloxidase, Lysozyme, Caspase, Crustin-like peptide, C-type lectin3, Serin proteinase inhibitorでLPS投与により発現が上昇する傾向が認められ、当初の予想どおり、海産性光合成細菌Rhodovulum sp. KKMI01が持つクルマエビの自然免疫を活性化する物質が細胞壁成分のLPSである可能性が示された。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、学会がOnline開催となり、予定していた旅費100,000円の支出が0円になった。また-80度フリーザーの予算を1,800,000円で計上していたが、実際には予定より多い値引き額を得ることができ、支出が減少した。 翌年度分として請求した助成金は、次年度研究計画に検討項目として追加した淡水性光合成細菌LPS試験の費用(菌からLPSを抽出するキット費用等)に充当する。
|