研究課題/領域番号 |
20K06217
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
古島 靖夫 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋生物環境影響研究センター), グループリーダー代理 (90359159)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多波長励起式撮影装置 / 蛍光画像 / 海洋生物マッピング / 環境計測 / 環境影響評価 |
研究実績の概要 |
海洋生物(主に藻類やサンゴ)が有する蛍光を簡便かつ安価に多波長で捉えることにより、分布だけではなく生物判別や健康度を広域的に把握できる海洋生物マッピングと環境計測の基盤技術を構築することが本研究の目的である。 近年、組立式の小型ROVが安価で入手可能になり、人が潜って調査できる水深よりも深く(水深50m以深)、且つ広範囲における現場調査が容易に出来るようになった。本研究では、その小型ROVに4種の励起光(多波長励起の機能)を有する蛍光撮影装置と環境センサー(水温・塩分計等)を搭載し海底マッピングを試みる。そのために、初年度はROVの開発(製作)、多波長励起蛍光撮影装置の設計等を行った。 令和3年度は、COVID-19の影響と励起光光源の再検討で開発が遅れていた多波長励起蛍光撮影装置の製作を行った。光源回路の不具合により数回の改良を繰り返したため、若干開発に遅れが生じたものの概ね完成した。また、多波長励起蛍光撮影装置で得られた画像の基準化手法を開発するために、使用する4種の励起光光源とカットフィルターを用いてベースラインデータとなる蛍光画像を取得した。蛍光撮影試験には、市販の蛍光リファレンススライド(青、緑、黄、赤)と蛍光発光するカラー砂をプラスチック製のスライドガラスに塗布したサンプル等を用いて試験撮影を行った。併せて、分光放射計(JAZ Spectrometer)を用いて使用蛍光撮影した各スライドの蛍光波長に対する強度の計測を行った。これらのデータを画像解析ソフトに取り込み、多波長励起蛍光撮影装置で得られた画像を基準化するための手法開発に着手した。 また、令和3年度に実施予定だった現場での装置の作動確認試験と生物を対象とした蛍光撮影試験は、COVID-19による出張制限等により、筑波大学下田臨海実験センターにおける実験計画の調整ができなかったため令和4年度に実施することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タイムラプス機能付多波長励起蛍光撮影装置は、搭載した4台のカメラを同時に作動させ、異なる励起光(白、黄、橙、赤)による蛍光画像を1回の撮影で得られるように設計されている。しかしながら、励起光との連動のための回路に不具合が見つかり、その改良に時間を要した。現在は、修復され装置は完成した。また、小型ROVの下部に多波長励起蛍光撮影装置を搭載するためのステイの改造に時間を要しており、多波長励起蛍光撮影装置を搭載した小型ROVの製作は令和4年度当初まで延長することとした。 令和3年度は、計画していた現場での装置の作動確認試験と生物を対象とした蛍光撮影試験が出来なかった。そのため、筑波大学下田臨海実験センターと再調整を行い、多波長励起式撮影装置による蛍光撮影試験は令和4年度上半期に実施することとした。 多波長蛍光画像の基準化手法の開発については、概ね計画通りに進行しいる。しかしながら、現場データに対する処理法については、令和4年度における現場実験のデータを取り入れて実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に計画している現場での海洋生物の蛍光撮影試験については、筑波大学下田臨海実験センターの協力を得て進める予定である。しかしながら、今後のCOVID-19の影響を俯瞰し、下田臨海実験センターにおいて本研究で開発した装置による現場撮影試験の実施が難しいと判断された場合は、新江の島水族館、東京湾の干潟、海洋研究開発機構岸壁等における生物や藻場を対象とした現場調査に再調整することとする。 また、現場撮影試験においては、生物のみならず懸濁粒子(あるいは擬似粒子)の挙動を蛍光画像として可視化し、近底層にける混合環境を把握する実験への応用(利用)も併せて検討していていきたい。 さらに、サンゴ礁学会や沿岸域学会等において、本研究で開発した装置に関わる成果報告を進めると同時に研究協力者であるOREを通じて製品化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加費および出張旅費を計上していたが、学会期間に調査航海が重なり参加できなかった。また、COVID-19の影響で出張が制限され、出張先である筑波大学下田臨海実験センターと調整が出来なかったこと等により使用しなかった。また、装置の開発の遅延により研究成果投稿料も使用しなかった。なお、今年度の未使用額については、令和4年度に実施する筑波大学下田臨海実験センターにおける技術開発試験、学会参加等の旅費として使用する。
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