本研究の目的は、海洋生物(主に藻類やサンゴ)が発する蛍光を簡便かつ安価に多波長で画像として捉え、その結果を基に生物判別や健康度を広域的に把握できる海洋生物マッピングと環境計測の基盤技術を構築することである。多波長励起式蛍光画像撮影装置とこれを搭載する小型ROVの開発は、進捗がやや遅れたものの最終年度(令和4年度)までに概ね終了した。しかしながら、多波長での蛍光画像データの取得(蓄積)と画像の処理・解析技術の基盤構築、および小型ROVに本装置を搭載した調査技術の開発を実施する時間が不足したため研究期間を延長した。 令和5年度は、研究協力を受けている筑波大学下田臨海実験センターの屋外水槽の海洋生物を対象に、開発した装置を用いた撮影試験と対象とした生物が発するスペクトル計測を実施しベースラインデータを得た。これらのデータは、生物判別等の解析を行うための基礎データとして利用した。また、本装置が近底層における混合環境を可視化するためのツールとして利用できるか、海洋生物イメージングとモニタリングを実施する装置として製品化できるか否かを研究所や民間企業で試験運用した。撮影装置は、軽量で小型であるため、人が潜水調査時に水中カメラと同様に使用することは可能であった。しかしながら、昼間の調査の際に、周囲を暗くする必要があるため、その作業がやや手間であった。一方、海中において長時間の撮影を実施するために、本装置を小型ROVに搭載し現場での撮影を試みた。その結果、昼間の撮影では、本体前面に取り付けたシェードがバランスや走行性に影響を及ぼす問題が残った。多波長励起式蛍光画像撮影装置については、製品化の可能性が示唆されたため、研究協力を受けたO.R.Eにおいて、引き続き製品化を目指し改良(改造)を行うことになった。また、画像処理・解析については、環境影響評価手法の一環として継続して行うこととした。
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