沖縄県八重山市場における調査で得られたブダイ類全種で、スカファノケファルス属寄生虫の寄生状況を整理し、各種の寄生率を算出した。結果、寄生率は魚種間で大きく異なることが分かった。各種の既知の生物学的情報と関連させて考察したところ、寄生率は、分類学的な系統関係とは関連がなく、ブダイ類で良く知られている夜間の粘液膜を作る行動とも関連がなかった。一方で、餌を含む摂餌生態と部分的な関連が示唆され、摂餌生態と寄生に何らかの関連があることが推測された。本結果は論文としてまとめて学術誌に投稿し、受理・掲載された。また、寄生虫の種を正確に同定した論文も学術誌に受理・掲載された。 ブダイ類各種の寄生率を基に、水揚げ尾数がブダイ類で5番目に多く、寄生率も26.6%と高いうえ、色彩による雌雄の判別も容易なヒブダイを主な研究対象種に設定した。本年度は、八重山漁協に水揚げされる対象魚を収集する体制を確立することと、冬季に多く水揚げされる本種の標本収集を始めることが主な目的であったが、収集開始がやや遅れたものの、1月と2月に合計3回、計62個体を収集できた。これらは、信頼できる漁業者らが漁獲しており、漁獲場所が正確に記録されているため、生息環境と寄生率を関連付けるのに十分なデータを伴っている。これら標本個体は、生鮮状態で研究所に送付され、寄生状況を詳細に記録した後、各部位を計測・記録した。また、全個体を解剖し、年齢査定用に耳石を、成熟状況の確認のため生殖腺を摘出し、保存した。
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